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公務災害の損害賠償請求

公務員に対する安全配慮義務-民間の労働者との違い

労働契約上、使用者は、労働者に業務をさせるにあたって、労働者の安全に配慮する義務(安全配慮義務)があります。

労働契約法第5条

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする

ただ、公務員には、労働契約法は適用されません(労働契約法22条)。
しかし、最高裁で最初に使用者の安全配慮義務が認められたのが公務員(自衛隊員)の公務災害のケースであり(最高裁昭和50年2月25日判決)、そのずっと後になって労働契約法に使用者の安全配慮義務が規定されたことからもわかるとおり、安全配慮義務の考え方は、国や地方公共団体等が、国家公務員や地方公務員に公務を遂行させる際にも当てはまります。
つまり、国や地方公共団体等は、公務員に対して信義則上(民法1条1項)の安全配慮義務を負うと考えられています。

民法第1条2項

権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

国や地方公共団体等が安全配慮義務に違反したことによって、公務災害が発生した場合、被災職員または遺族は、国家賠償法または民法に基づき損害賠償請求をすることができます。

国家賠償法1条1項

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

民法第415条前段

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

損害賠償請求の手続き

民間の労災における損害賠償請求では、多くの場合、まずは会社に内容証明を送り、任意交渉で解決できないか探ります。

しかし、国・地方公共団体は、基本的に任意交渉で和解に応じることはありません。訴訟においても、予防接種等によるB型肝炎やアスベスト工場労働者のアスベスト疾患についての国家賠償請求訴訟のように訴訟における和解が定型化されている場合を除いては、和解に応じることは少ないといってよいでしょう。

そのため、公務災害の損害賠償請求では、多くの場合、訴訟を提起し、裁判所に判決を出してもらうことになります。

争う相手(被告)は、国または地方公共団体等(たとえば、大阪市など)となります。

「国のような巨大権力が相手だと、勝つのが難しい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、公務災害の損害賠償請求は、公務員側が立証するべき内容(安全配慮義務違反の内容、事故発生の経緯、後遺障害の程度、過失割合、過労死等であれば長時間労働の実態など)は、一般の労災と共通します。

「誰が被告か」ということよりも、証拠資料を元に、これらの点をどれだけ的確に主張できるかが一番のポイントとなります。

弁護士四方