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労災の後遺障害(後遺症)の認定について

後遺障害とは

労災によって怪我や病気を抱えたとき、通常であれば、治療と共に症状が良くなり、最終的には完治することになります。 しかし、症状が特に重いときには、完治せず、何らかの不具合が身体に残ってしまうことがあります。これが、後遺障害です。

労災保険では、後遺障害が残ることを「症状固定」(治癒)と言います。
「治癒」というと、健康な状態に回復した状態を連想させますが、労災保険では「不具合は残っているものの、これ以上治療しても良くなる見込みがない(怪我や病気の程度が変化しない)」状態のことも「治癒」(症状固定)として扱われます。

症状固定とは

「障害」というと、手や足などの体の一部を失ってしまったり、全く動かなってしまったりするイメージが強い方もいるかもしれませんが、実際には、痛みやしびれだけが残る、動きが一部制限される、というのも後遺障害のひとつです。

障害補償給付の請求(労災申請)

「症状固定」すると、労災保険の「休業補償給付」や「療養補償給付」は、支給されなくなります。
その代わり、一定以上の後遺障害が残ってしまった場合、労災保険より「障害補償給付」を受給することができます。

まずは労災申請をすること

注意しなければいけないのは、障害補償給付は自動的に支給されるものではなく、休業補償給付や療養補償給付とは別に、被災労働者が改めて労働基準監督署に請求する必要があるということです。

労災保険で治療を受けていれば、通常、医師の方から、治療終了時に後遺障害が残っていることや、労災申請(障害補償給付の請求)ができることを教えてもらえます。

しかし、稀に、そのような情報が得られないこともあります。また、労災隠しのため、健康保険を利用して治療を受けているときには、更にそのような情報が入手しづらくなります。

怪我や病気の治療が打ち切られたのに、自身では良くなりきっていないと感じるときには、後遺障害が残っているのではないかと考え、まずは障害補償の労災申請をしてみるのがよいでしょう。

障害補償給付の請求の時効は、症状固定から5年ですから、その点にも注意が必要です。

認定の流れ

障害補償給付の請求をおこなうと、労働基準監督署が後遺障害の程度について調査します。そして、労働者災害補償保険法施行規則別表記載の「障害等級表(※厚生労働省のページへ移動します)」に応じて、「後遺障害等級」が認定されます。

大まかな認定の流れは次のとおりです(支給される場合)。

  1. 被災労働者が、障害補償給付請求をおこなう
  2. 労働基準監督署による調査が開始される
  3. 主治医の診断書のほか、必要に応じて労災医員の意見書、調査官による本人への聴き取りなどを元に、後遺障害等級が決定される
  4. 被災労働者へ支給決定通知が送付され、一時金あるいは年金が支給される

※労基署が「後遺障害が存在しない」あるいは「後遺障害の程度が軽く、給付の対象に至らない」と判断すれば、障害補償給付は支給はされません。
この場合、「支給決定通知」ではなく「不支給決定通知」が届くことになります。この決定に不服がある場合は、審査請求の手続きをおこなうことができます。

※支給決定通知の到着と支給の振込は、前後する場合があります。

後遺障害等級について

「後遺障害等級」は、障害補償の支給金額を大きく左右します。

後遺障害等級には、1級から14級までの等級があり、数字が小さいほど障害が重く、補償が手厚くなります。14級から8級までは、一時金といって、一回限りの支給ですが、特に障害が重い7級から1級は継続的に年金が支給されます。

後遺障害等級(一時金・年金)

何級と認定されたかは、労働基準監督署から送られてくるハガキ(年金・一時金支給決定通知)に書いてあります。

ただし、適切な調査がおこなわれず、誤った後遺障害等級が認定されることがあります。その場合、後述する審査請求の手続きをおこなわなければなりません。

支給額

障害補償給付の支給額は、年金の場合・一時金の場合で計算方法が異なります。

年金(1級~7級)の場合

年金が支給される場合、「給付基礎日額」に、それぞれの等級に応じた日数分をかけることで、年金額を計算することができます。

  • 年金額=給付基礎日額×特定の日数

たとえば、給付基礎日額が1万円、後遺障害が5級の場合には、1万円×184日分=184万円が年金額となります。

障害等級1級2級3級4級5級6級7級
年金の内容(×給付基礎日額)313日分277日分245日分213日分184日分156日分131日分

ただし、同一の障害について、厚生年金保険や国民年金から、障害厚生年金、障害基礎年金を受給する場合には、労災保険の障害補償年金は次のとおり調整(減額)されます。

  • 障害厚生年金と障害基礎年金を受給する場合…73%
  • 障害厚生年金を受給する場合…83%
  • 障害基礎年金を受給する場合…88%

一時金(8級~14級)の場合

一時金が支給される場合も、「給付基礎日額」に、それぞれの等級に応じた日数分をかけることで、一時金を計算することができます。

たとえば、給付基礎日額が1万円、後遺障害が12級の場合には、1万円×156日分=156万円が一時金額となります。

障害等級8級9級10級11級12級13級14級
一時金の内容(×給付基礎日額)503日分391日分302日分223日分156日分101日分56日分

特殊な取扱いについて

後遺障害の認定にあたっては、特殊な取扱いがなされることがあります。代表的なものを説明します。

複数の障害が残ったとき

一つの労災事故によって、後遺障害等級13級以上の身体障害を2つ以上負った場合には、基本的に、次のルールに従って繰り上げがおこなわれます(ただし、1級を超えることはできません)。

  • 13級以上の身体障害が2つ以上ある→重い方の等級を1級繰り上げ
  • 8級以上の身体障害が2つ以上ある→重い方の等級を2級繰り上げ
  • 5級以上の身体障害が2つ以上ある→重い方の等級を3級繰り上げ

たとえば、7級と11級の後遺障害がある場合、「13級以上の身体障害が2つ以上ある」に該当するので、「7級」を1級繰り上げた「6級」で認定されることになります。

ただし、繰り上げをすることによって、補償内容が妥当でなくなるときには、繰り上げ自体をおこなわない場合や、繰り上げや受給額について特別な調整がおこなわれる場合があります。

後遺障害等級表に記載されていない障害が残ったとき

後遺障害等級表に記載されていない後遺障害を負った場合には、近似している系列の障害等級を参考にして、準用等級として認定されます。

もともとあった障害が悪化したとき

もともと身体障害のあった人が、労災に遭い、同一の部分にさらに重い障害を負った場合、「加重」といって、悪化した程度に応じて障害補償が支給されます。

審査請求(認定に対する不服の手続き)

障害等級表における身体障害の程度については、基準があまり明確でないものもあります。たとえば、足を怪我して、痛みだけが残った場合、14級の「局部に神経症状を残すもの」か12級の「局部にがん固な神経症状を残すもの」に該当する可能性がありますが、いずれで認定されるか、基準は必ずしも明確だとは言えません。

このような場合、後遺障害等級が不当に低く認定されてしまうことがあり、その場合には不服申立ての手続きを通じて、認定内容の是正を求めるよりほかありません。たとえば、痛みの程度がひどく、日常的に支障が大きいのに14級と認定されれば、審査請求の手続きをおこなうことをお勧めします。

会社への損害賠償請求について

後遺障害を負うと、労働者は、身体の不自由による日常的な不便やストレスを抱えるほか、できる仕事が制限されたり、収入が減ったりしてしまうという問題につながることもあります。

会社(雇用主など)が安全対策を怠ったことにより労災が発生したときには、これらの補償を会社に求めることが考えられます。混同されがちですが、会社への損害賠償請求は、労災申請とは全く異なる手続きです。詳しくは、労災の損害賠償請求のカテゴリのページで解説をしています。