2019年6月3日より、名称を「四方法律事務所」から「大阪労災・労働法律事務所」に変更しました。

公務災害の申請

公務災害とは

対象となる公務員(一部の独立行政法人の職員を含む)が、公務の遂行に起因して被った負傷・疾病・障害・死亡の災害を「公務災害」といいます。

一方、「労災」とは、民間企業(個人事業主を含む)に雇用された労働者が、業務の遂行に起因して被った負傷・疾病・障害・死亡の災害をいいます。

「仕事が原因である災害」という点では両者は同じですが、根拠となる法律が次のように異なります。

公務災害 国家公務員の場合:国家公務員災害補償法

地方公務員の場合:地方公務員災害補償法

労災(労働災害) 労働者災害補償保険法

このため、同じ「仕事が原因である災害」であっても、労災か公務災害か、公務災害の中でも地方公務員か国家公務員かに応じて、補償を受けるための申請先や手続き、時効などが異なります。

なお、国家公務員でも、特別職の国家公務員(裁判官、自衛官など)の公務災害については、国家公務員災害補償法とは別の法令に定めがあり、国家公務員災害補償法と同水準の補償がおこなわれています。

また、地方公務員でも、非常勤職員の多くの公務災害については、地方公務員災害補償法に基づいて条例が定められていたり、労働者災害補償保険の適用があったりします。

このように、公務災害のしくみは複雑ですから、個別の事案については、いちど弁護士にご相談ください。

公務災害の申請先

地方公務員の場合

被災職員または遺族等が、任命権者を経由して、地方公務員災害補償基金の支部長に、各種補償の請求をおこないます。

「任命権者」とは、公務員の任命に関して権限を持つ者のことで、たとえば、地方公共団体の長、道府県警察本部長、消防長などです。

「職員が所属している機関のトップ」と考えると分かりやすいでしょう。

地方公務員災害補償制度は、「請求主義」であり、被災職員または遺族が請求をすることにより、必要な補償がおこなわれます(弁護士が代理人として申請をおこなうことも可能です)。

国家公務員の場合

被災職員または遺族等から災害発生の申出があった場合、または補償事務主任者(あらかじめ実施機関の長が指名しています)が災害発生を探知した場合、補償事務主任者が、被災職員の所属に応じて、実施機関(財務省・外務省・警察庁・国税庁・などの各省庁、国立公文書館・国立印刷局などの独立行政法人、日本郵政株式会社)に災害発生の報告をおこないます。弁護士が代理人として災害発生の申出をおこなうことも可能です。

報告を受けた実施機関は、公務災害にあたるかどうかの認定を速やかにおこない、被災職員または遺族等にその通知をしなければならないとされています。公務災害と認定された場合には、被災職員または遺族等が補償を請求することになります。

国家公務員災害補償制度は、「請求主義」をとる地方公務員災害補償制度と異なり、「職権探知主義」をとっており、公務災害にあたるとの認定がなければ、補償を請求することができません。

申請の時効(期限)

地方公務員の場合

補償請求をする権利は、療養補償・休業補償・介護補償・葬祭補償は2年間、障害補償・遺族補償は5年間、これを請求しないときには時効により消滅します。

なお、傷病補償年金は職権により支給決定がなされるため、時効の問題は生じません。

国家公務員の場合

補償請求をする権利は、療養補償・休業補償・介護補償・葬祭補償は2年間、傷病補償年金・障害補償・遺族補償は5年間、これを請求しないときには時効により消滅します。

ただし、国家公務員災害補償制度では「職権探知主義」がとられているため、実施機関が公務災害にあたると認定し、被災職員またはその遺族等に補償を受ける権利がある旨の通知をしなければ補償を請求することができないため、その場合、時効は進行しません

仕事中の事故であれば、補償を受ける権利がある旨の通知がなされないケースは稀でしょうが、過労死や過労自殺といった事案では、公務との関連性が一見して明らかではないため、通知がなされないことも少なくないと思われます。

このような場合、時効は進行せず、時効期間が経過したあとでも災害発生の申出は可能ですから、諦めないことが大切です。

弁護士四方

補償の内容

公務災害が発生した場合、次のような補償があります。

①療養補償

負傷または疾病が治るまでの治療が補償されます。

 

②休業補償

療養のために勤務できないときに、給与の60%に相当する額が補償されます。

 

③傷病補償年金

療養の開始後1年6か月を経過しても治らず、その障害の程度が一定の傷病等級に該当する場合、年金が支給されます。

 

④障害補償(障害補償年金または障害補償一時金)

症状固定後、一定の障害が残った場合、その程度に応じて一時金または年金が支給されます。

 

⑤介護補償

傷病補償年金又は障害補償年金を受給していて、一定の程度の障害があり、常時又は随時介護を受けている場合、介護補償が支給されます。

 

⑥遺族補償(遺族補償年金、遺族補償一時金)

被災職員が死亡した場合、遺族に対し、年金・一時金が支給されます。

 

⑦葬祭補償

被災職員が死亡した場合、葬祭をおこなった者に対し、葬祭補償が支給されます。

このほか、福祉事業より一定の追加給付がなされます。

被災職員の所属により根拠となる法令が異なるため、一概には言えませんが、公務災害では、福祉事業からの給付として、労災保険における社会復帰促進等事業と同等かそれ以上の給付がなされます(休業援護金・特別支給金・特別援護金・特別給付金・就学援護金の給付、アフターケアなど)。

弁護士四方

不服審査制度

次のように、公務災害の認定に不服がある場合には、不服審査を申し立てることができます。

  • 公務災害ではないと判断された
  • 後遺障害が軽い等級で認定された
  • 平均給与額が少なく計算された

地方公務員の場合

補償については、各都道府県にある地方公務員災害補償基金の支部審査会に対し、審査請求をします。審査請求の期限は、決定の事実を知った日の翌日から3か月以内です。

また、支部審査会の裁決にも不服がある場合は、地方公務員災害補償基金審査会に対して再審査請求をします。再審査請求の期限は、裁決書を受け取った日の翌日から1か月以内で、特に短いため注意が必要です。

さらに、審査会の裁決に不服がある場合には、地方裁判所へ行政訴訟を提起することができます。

なお、福祉事業については審査請求の対象とはなりませんが、別途、その決定をおこなった支部長に対して、不服の申出をすることができます。

国家公務員の場合

補償については、人事院に対し審査の申立てをします。特に期限の定めはありませんが、あまり時間が経つと証拠資料が失われて事実関係を明らかにすることが難しくなります。

さらに、人事院の判定に不服がある場合には、地方裁判所へ行政訴訟を提起することができます。

なお、福祉事業については審査申立ての対象とはなりませんが、別途、人事院に対し、措置の申立てをすることができます。

民間の労災であれば、たとえ職種が異なっていても適用される法律や労基署の調査の流れ(実務要領)は同じで分かりやすいですが、公務災害は、被災職員の所属に応じて適用される法令が異なり、複雑です。さらに、公務災害の相談は労災に比べると少なく、労働問題に詳しい弁護士であっても、その都度、関連する法令を調べて対応する必要があります。

ただし、それは手続きの詳細に関する話であって、本質的な部分、たとえば公務災害であることを認定してもらうポイントや、後遺障害の等級などについての考え方は、一般の労災とほぼ共通していますから、安心してご相談ください。

弁護士四方