脊柱(せきちゅう)と脊髄(せきずい)の違い
脊柱(せきちゅう)とは、簡単にいうと背骨(せぼね)そのものです。
一方、脊髄(せきずい)とは、背骨の中に走っている神経のことです。
脊髄を損傷したときには、手足の麻痺など、全身の機能に異常があらわれるため、基本的に、「神経系統の障害」として扱われます(脊髄の障害についてはこちら)。
また、脊柱の障害があるほか、脊髄損傷による脊髄損傷による神経系統の障害もあるときにも、神経系統の障害として総合的に障害等級が認定されます。
脊柱の後遺障害
脊柱の後遺障害には、
があります。
脊柱の変形障害
後遺障害等級表
等級 | 身体障害 | 労災保険による補償 |
第6級の4 | せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの | 給付基礎日額の156日分(年金) |
第11級の5 | せき柱に変形を残すもの | 給付基礎日額の223日分(一時金) |
認定基準
変形障害は3段階
後遺障害等級表上では、脊柱の変形障害は「著しい変形を残すもの(6級)」「変形を残すもの(11級)」の2段階です。
しかし、認定基準では、さらに、第8級に準ずる障害として「せき柱に中程度の変形を残すもの」を加え、3段階で認定することとされています。
頸椎と胸腰椎は別に認定される
脊柱には、頸椎(頚部)と胸腰椎(胸腰部)があります。
頸椎は頭部を支える役割、胸腰椎は体幹を支える役割があります。
このように、それぞれの機能が異なることから、障害等級の認定においては、頸椎と胸腰椎は異なる部位として扱い、それぞれの部位ごとに等級が認定されます。
6級に認定される要件
エックス線写真、CT画像又はMRI画像によって、脊椎圧迫骨折等が確認でき、かつ、次のいずれかに該当する場合、「せき柱に著しい変形を残すもの」として第6級の4に認定されます。
- 脊椎圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少(※1)し、後彎が生じている
- 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少(※2)し、後彎が生じるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっている
※1:減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さ以上である状態
※2:減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上である状態
8級に認定される要件
エックス線写真等により、脊椎圧迫骨折等を確認でき、かつ、次のいずれかに該当する場合、「せき柱に中程度の変形を残すもの」として第8級(準用)に認定されます。
- 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少した(減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個当たりの高さの50%以上である状態)
- コブ法による側彎度が50度以上である
- 環椎または軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)によって、次のいずれかに該当する状態である
- 60度以上の回旋位となっている
- 50度以上の屈曲位または60度以上の伸展位となっている
- 側屈位となっていて、エックス線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できる
11級に認定される要件
次のいずれかに該当する場合、「せき柱に変形を残すもの」として第11級の5に認定されます。
- 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できる
- 脊椎固定術がおこなわれた(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除く)
- 3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けた
脊柱の運動障害
後遺障害等級表
等級 | 身体障害 | 労災保険による補償 |
第6級の4 | せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの | 給付基礎日額の156日分(年金) |
第8級の2 | せき柱に運動障害を残すもの | 給付基礎日額の503日分(一時金) |
認定の基準
6級に認定される要件
次のいずれかにより頸部および胸腰部が強直した場合、「せき柱に著しい運動障害を残すもの」として、第6級の4に認定されます。
- 頸椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等があることがエックス線写真等により確認できる
- 頸椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われた
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化がある
8級に認定される要件
次のいずれかに該当する場合、「せき柱に運動障害を残すもの」として、第8級の2に認定されます。
①次のいずれかによって、頸部または胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限された
- 頸椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残していることがエックス線写真等により確認できる
- 頸椎または胸腰椎に脊椎固定術がおこなわれた
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化がある
②頭蓋・上位頸椎間に著しい異常可動性が生じた
局部の神経症状としての認定
次のすべてに該当する場合、局部の神経症状として等級が認定されます。
- エックス線写真等で、脊椎圧迫骨折・脊椎固定術が認められない
- 項背腰部軟部組織の器質的変化が認められない
- 単に疼痛(痛み)のために運動障害がある
その他の体幹骨の変形障害
後遺障害等級表
等級 | 身体障害 | 労災保険による補償 |
第12級の5 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの | 給付基礎日額の156日分(一時金) |
12級に認定される要件
ここでいう「著しい変形を残すもの」とは、エックス線写真によって変形が確認できるだけでは足りず、裸体となったとき、変形(欠損を含む)が明らかに分かることが必要です。
弁護士四方の解決事例(損害賠償請求)
- 工事中、落下した工作物の下敷きとなり、頸椎・腰椎の運動障害が、参考可動域に比して1/2以下に制限され(8級の2)、その他の障害と併合して6級とされた事例
- 高所作業中、転落し、脊椎圧迫骨折(せき柱の変形)が残った事例(11級の5)
- 倒れたカゴ車の下敷きとなり、第1腰椎の圧迫骨折(せき柱の変形)が残った事例(11級の5)
弁護士 四方久寛(大阪弁護士会所属)