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疼痛(痛み)、感覚の後遺障害(労災)

労災事故によって受傷した部位に、症状固定後も疼痛(痛み)、痺れなどの感覚障害がある場合、神経系統の障害として認定される可能性があります。

そして、次のいずれかによって、対象となる等級が変わります。

  1. 疼痛、感覚障害(特殊な性状の疼痛を除く)
  2. 特殊な疼痛(カウザルギー、反射性交感神経性ジストロフィー)

疼痛、感覚障害(特殊な性状の疼痛を除く)

後遺障害等級表(局部の神経系統の障害)

等級 障害の程度 労災保険による補償
第12級の12 局部にがん固な神経症状を残すもの 給付基礎日額の156日分(一時金)
第14級の9 局部に神経症状を残すもの 〃56日分(一時金)

疼痛・感覚障害の等級は、12級と14級の2種類しかありません。

また、等級表上、その違いというのは、神経症状に「がん固」という条件が付くか付かないかの差しかありません。

痛みを始めとする感覚障害は、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼすことも少なくありませんが、労災の後遺障害の中ではあまり重い障害として認定してもらえないという問題点があります。

認定の基準

疼痛(痛み)の場合

疼痛(痛み)の場合には、12級または14級となる可能性があります。

12級の基準

「通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの」と判断された場合には、第12級の12となります。

14級の基準

「通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」と判断された場合には、第14級の9となります。

疼痛以外の感覚障害

疼痛以外の異常感覚(蟻走感、感覚脱失等)は、その範囲が広い場合に限り、第14級に認定されます。

疼痛であれば、程度によって12級・14級の選択肢があるのに対し、疼痛以外の感覚障害は対象が14級しかありません。

疼痛を感じるときは、労基署の調査段階で積極的に調査官に伝えることが、正しい後遺障害等級の認定につながります。

参考:審査請求により後遺障害が14級から12級になった事例

特殊な疼痛(カウザルギー、反射性交感神経性ジストロフィー)

後遺障害等級表

等級 障害の程度 労災保険による補償
第7級の3 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 給付基礎日額の131日分(年金)
第9級の7の2 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 給付基礎日額の391日分(一時金)
第12級の12 局部にがん固な神経症状を残すもの 〃56日分(一時金)

認定の基準

カウザルギー

カウザルギーとは、末梢神経の不完全損傷によって生じる灼熱痛で、血管運動性症状、発汗の異常、軟部組織の栄養状態の異常、骨の変化などを伴う強度の疼痛です。

後遺障害等級は、疼痛の部位、性状、疼痛発作の頻度、疼痛の強度、持続時間、日内変動、疼痛の原因となる他覚的所見などにより、疼痛の労働能力に及ぼす影響に応じて次のように判断されます。

  1. 軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛がある→7級
  2. 通常の労務に服することはできるが、疼痛により時には労働に従事することができなくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される→9級
  3. 通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の疼痛が起こる→12級

反射性交感神経性ジストロフィー

反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)では、カウザルギーと同様の疼痛がおこります。

エックス線写真等の資料で、次の3つの症状が健側として比較して明らかに認められる場合、カウザルギーと同様の基準により、後遺障害の等級が7級、9級、12級に認定されます。

  1. 関節拘縮
  2. 骨の萎縮
  3. 皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)

弁護士四方の解決事例(損害賠償請求)

  • 解体工事中、穴に足をとられ負傷し、右下腿部に知覚麻痺(痺れ)が残った事例(14級の9)
  • 機械装置の清掃作業中、頭部に鉄の蓋が当たり、外傷性頚椎椎間板ヘルニア、外傷性腰椎椎間板ヘルニアが残った事例(併合11級)
  • 工場にて作業中、クレーンからはずれて落下した床材の下敷きとなり、左ひざ関節に疼痛が残った事例(14級の9)
  • 上司の誤った指導により、ラッピングローラーに手が巻き込まれ、痺れ及び痛みのがん固な神経症状が残存した事例(12級の12)

弁護士 四方久寛(大阪弁護士会所属)