労災保険とは
労災保険とは、労働者が仕事により怪我をしたり、病気になったり、障害を負ったり、命を失ってしまったときに、その労働者や遺族の生活をサポートするためのものです。
具体的には、次のような補償があります。
- 治療費が発生した場合…療養補償(治療費を全額補償)
- 労災による治療のために仕事を4日間以上休まなければならない場合…休業補償(休職中の給料の80%相当(特別支給金を含む)を補償)
- 後遺症が残った場合…障害補償(一時金または年金)、子の就学援護費(1~3級の場合)
- 被災労働者が亡くなってしまった場合…遺族補償(一時金または年金)、葬祭料、子の就学援護費など
申請方法
請求する補償の内容に応じた所定の申請用紙に、住所、氏名、事故の状況など必要なことがらを記入し、医師に診断結果を記入してもらい、記載内容について事業主(会社)の証明を得たうえで、職場の事業所を管轄する労働基準監督署に提出します。
より具体的な申請方法は、労働基準監督署の窓口にて、教えてもらうことができます。
申請から給付まで
労災保険は、申請と同時に給付を得られるわけではありません。申請から給付までは、次のような流れとなります。
- 労働者または遺族より労災申請をする
- 労基署の調査官により、申請内容に関する調査がおこなわれる
- 2の調査を踏まえたうえで、労災にあたるか否かが判断される
- 保険金が給付される(労災認定された場合)
3で労災にあたらない(不認定)とされた場合には、保険金は不支給となります。
認定について
労災認定を受けるには、「仕事によって災害が発生した」という因果関係が認められなければいけません。
「いろいろな労働災害」のページで紹介した事例のうち、「事故などによる仕事中の怪我」であれば、被害が仕事によるものであることが明確なことが多いため、問題なく労災認定される可能性が高いですが、「仕事による病気の発症」であれば、それぞれに定められた労災認定基準(外部ページに移動します)を満たさなければ、不認定となってしまいます。
これらの認定基準では、細かく複雑な項目が設けられていますが、労基署の調査が不十分な場合には、基準を満たしていると考えられる場合でも不認定とされてしまうこともあります。
労基署の決定に対して不服がある場合には、労働者または遺族は、労基署の決定に対して、不服の手続き(審査請求、再審査請求)をおこなうことができます。
時効について
労災保険には、次のとおり、申請できる期間に制限(時効)があるので注意が必要です。
- 療養補償…療養から2年
- 休業補償…休業から2年
- 障害補償…症状固定から5年
- 葬祭料…被災労働者の死亡から2年
- 遺族補償…被災労働者の死亡から5年
「労災隠し」にご注意
労災保険は、労働者の福祉のために設けられている制度ですから、労災が発生し受給要件に該当すれば速やかに申請し、給付を受けることができるべきです。
しかし、実際には、会社(雇用主)が、労災が発生したことを隠すために、労災申請をさせないケースが後を絶ちません。いわゆる「労災隠し」です。
会社が労災申請の手続きをとってくれないときには
会社が手続きをとってくれなくても、労災申請は、労働者個人がおこなうことができます。
労災保険の申請用紙には、会社が、労災が発生したことを証明する欄がありますが、この証明をしてもらえなかったとしても、証明を拒否された経緯を伝えれば、労働基準監督署に申請を受け付けてもらうことができます。
まずは、申請をすることが大切
労災隠しの一つに、「労災申請させない代わりに、会社が治療費や休業中の給料を労働者に支払う」という手法があります。
会社が、労災保険と同等(あるいは、それ以上)の支払を労働者にするのであれば、親切なようにも思えます。しかし、この種のケースでは、障害が残ってしまったときにそれに関する補償は一切おこなわず、労災申請もさせないというのが典型例で、全体的にみれば労働者が不利益を被ることもあります。
また、労災申請をしないことによって、事故の原因がうやむやにされてしまい、再発の防止策が十分に採られなかったり、損害賠償請求における立証に影響するなどの問題が生じる恐れもあります。 労災が発生し、治療や休業等が必要になれば、まずは労災申請をすることが大切です。
原因・状況は正確な記載を
労災の申請はするものの、労災が発生した経緯や状況について、会社が申請書類に虚偽の内容を記す場合があります。 たとえば、機械の故障の放置によって事故が発生したのに、労働者自身の操作ミスによって労災が発生したと記載するなど、責任が会社ではなく労働者にあるかのように装うのが典型例です。
労災保険は、労働者に過失があるかどうかに関わらず給付されますが、虚偽の内容が事実であるかのように認定されてしまうのは大きな問題です。 このような場合、記載内容が誤りであることを、なるべく早く労働基準監督署に伝えるべきです。