新規相談受付の一部再開について

特別支給金とは-労災保険の上乗せ支給

特別支給金の支給は、労働者災害補償保険法29条に基づき、「社会復帰促進等事業」の一環としておこなわれるものです。

福祉的な性格が強く、「労災保険に上乗せして支払われるもの」と考えると分かりやすいでしょう。

種類

特別支給金には、9種類(休業特別支給金、障害特別支給金、障害特別年金、障害特別一時金、遺族特別支給金、遺族特別年金、傷病特別支給金、遺族特別一時金、傷病特別年金)があります。

それぞれの詳しい支給内容については、後ほど説明します。

申請方法

被災者(または遺族)は、労災保険の請求と同時に特別支給金の申請をおこなわなければなりません(特別支給金支給規則)。

しかし、両者は請求用紙が一体のものになっているので、実際の手続きとしては、特に意識をして特別支給金の申請をおこなう必要はありません。

労災保険と特別支給金は、申請用紙も一体となっており、給付(口座への振り込み)も同時におこなわれることから、特別支給金を受給していることに気づいていない方も多いです。

弁護士四方

性質

特別支給金は、福祉的な性格が強く、労災保険の給付とは異なる性質があります。

実務上、最も大きな違いは、損害賠償請求における損益相殺(控除)の有無です。

労働災害による損害について、損害賠償請求をおこなった場合、労災保険の給付金は、給付金と同じ趣旨の損害賠償費目(たとえば休業補償給付なら休業損害)から損益相殺(控除)されます。

一方、特別支給金は、労働福祉事業として支給されるものであり、損益相殺(控除)の対象とはなりません。

特別支給金は、損害賠償金から損益相殺できないということは、弁護士でも誤解している人が少なくありません。

会社側から損益相殺すべきという主張がなされることもありますが、しっかりと反論することが大切です。

弁護士四方

休業補償給付の上乗せ

特別支給金の支給額

労災保険(休業補償給付) 休業特別支給金
休業1日につき給付基礎日額の60%相当額(休業4日目以降) 休業1日につき給付基礎日額の20%相当額(休業4日目以降)

労災保険・特別支給金を合わせると、労働者の平均賃金の約80%が補償されるといえます。

障害補償年金の上乗せ

障害等級 労災保険(障害補償年金) 障害特別支給金(一時金) 障害特別年金
1級 給付基礎日額の313日分 342万円 算定基礎日額の313日分
2級 〃277日分 320万円 〃277日分
3級 〃245日分 300万円 〃245日分
4級 〃213日分 264万円 〃213日分
5級 〃184日分 225万円 〃184日分
6級 〃156日分 192万円 〃156日分
7級 〃131日分 159万円 〃131日分

労災保険からは、「給付基礎日額」(平均賃金に相当)に応じた年金が支給されます。

これに加え、特別支給金として①障害特別支給金(一時金)②障害特別年金が支給されます。

障害特別年金の「算定基礎日額」とは、賞与額に応じて計算されるものです。

障害補償一時金の上乗せ

障害等級 労災保険(障害補償一時金) 障害特別支給金(一時金) 障害特別一時金
8級 給付基礎日額の503日分 65万円 算定基礎日額の503日分
9級 〃391日分 50万円 〃391日分
10級 〃302日分 39万円 〃302日分
11級 〃223日分 29万円 〃223日分
12級 〃156日分 20万円 〃156日分
13級 〃101日分 14万円 〃101日分
14級 〃56日分 8万円 〃56日分

遺族補償年金の上乗せ

遺族数 労災保険(遺族補償年金) 遺族特別支給金 遺族特別年金
1人 給付基礎日額の153日分

一律300万円(一時金)

算定基礎日額の153日分
2人 〃201日分 〃201日分
3人 〃223日分 〃223日分
4人以上 〃245日分 〃245日分

遺族補償一時金の上乗せ

遺族補償一時金は、次のいずれかの場合に支給されるものです。

  1. 遺族補償年金を受ける遺族がいない場合
  2. 遺族年金を受けているものが失権し、かつ、当該年金を受けるものがいない場合であって、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき
労災保険(遺族補償一時金) 遺族特別支給金(一時金) 遺族特別一時金
給付基礎日額の1000日分 300万円 算定基礎日額の1000日分

傷病補償年金の上乗せ

障害等級 労災保険(傷病補償年金) 傷病特別支給金(一時金) 傷病特別年金
1級 給付基礎日額の313日分 114万円 算定基礎日額の313日分
2級 〃277日分 107万円 〃277日分
3級 〃245日分 100万円 〃245日分

その他の労災保険

療養補償給付、葬祭料、介護補償給付に関しては、対応する特別支給金はありません(労災保険からの給付のみ)。