高次脳機能障害の障害等級と認定基準(労災)

高次脳機能障害は、労災保険では、神経系統の障害(器質性精神障害)として認定されます。

高次脳機能障害は、追突事故・下敷き事故転落・転倒などによる頭部の外傷により発症することが多いです。

また、過労による脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)により発症することもあります。

弁護士四方

後遺障害等級表

等級 身体障害 労災保険による補償
第1級の3 神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 給付基礎日額の313日分(年金)
第2級の2の2 神経系統の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 〃277日分(年金)
第3級の3 神経系統の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 〃245日分(年金)
第5級の1の2 神経系統の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 〃184日分(年金)
第7級の3 神経系統の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 〃131日分(年金)
第9級の7の2 神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 給付基礎日額の391日分(一時金)
第12級の12 局部にがん固な神経症状を残すもの 〃156日分(一時金)
第14級の9 局部に神経症状を残すもの 〃56日分(一時金)

認定基準

1級に認定される要件

次のいずれかに該当する場合、「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」として第1級の3に認定されます。

  1. 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
  2. 高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの

2級に認定される要件

次のいずれかに該当する場合、「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」として第2級の2の2に認定されます。

  1. 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
  2. 高次脳機能障害による認知症、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
  3. 重篤な高次脳機能障害のため、自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの

3~14級に認定される要件

4能力について

高次脳機能障害に関する3級~14級の障害等級は、次の4つの能力の喪失の程度に着目し、評価がおこなわれます。

①意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力等)

職場において他人とのコミュニケーションを適切におこなえるか等。

 

②問題解決能力(理解力、判断力)

作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解し適切な判断を行い、円滑に業務が遂行できるかどうか。

 

③作業負荷に対する持続力、持久力

一般的な就労時間に対処できるだけの能力が備わっているか(精神面における意欲、気分または注意の集中の持続力・持久力)。

 

④社会行動能力(協調性等)

職場において他人と円滑な共同作業、社会的行動ができるか。

主に協調性の有無や不適切な行動(突然大した理由無く怒るなどの感情や欲求のコントロールの低下による場違いな行動等)の頻度について判断される。

これらのうち、複数の障害があるときには、原則として障害の程度の最も重篤なものに着目して評価がおこなわれます。

4能力の喪失の程度

A:多少の困難はあるが概ね自力でできる 能力を「わずかに」喪失
B:困難はあるが概ね自力でできる 能力を「多少」喪失
C:困難はあるが多少の援助があればできる 能力の「相当程度」を喪失
D:困難はあるがかなりの援助があればできる 能力の「半分程度」を喪失
E:困難が著しく大きい 能力の「大部分」を喪失
F:できない 能力の「全部」を喪失

C:問題解決能力の相当程度が失われている例

「1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、たまには助言を必要とする」

 

D:問題解決能力の半分程度が失われている例

「1人で手順とおりに作業を行うことに困難を生じることがあり、時々助言を必要とする」

 

E:問題解決能力の大部分が失われている例

「1人で手順とおりに作業を行うことは著しく困難であり、ひんぱんな指示がなければ対処できない」

 

F:問題解決能力が全部失われた例

「課題を与えられても手順とおりに仕事を全く進めることができず、働くことができない」

3級に認定される要件

次のいずれかに該当する場合、「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」として第3級の3に認定されます。

  1. 4能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われている
  2. 4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われている

5級に認定される要件

次のいずれかに該当する場合、「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」として第5級の1の2に認定されます。

  1. 4能力のいずれか1つ以上の能力の大部分が失われている
  2. 4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われている

7級に認定される要件

次のいずれかに該当する場合、「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」として第7級の3に認定されます。

  1. 4能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われている
  2. 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われている

9級に認定される要件

次の場合、「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」として第9級の7の2に認定されます。

  • 4能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度が失われている

12級に認定される要件

次の場合、「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの」として第12級の12に認定されます。

  • 4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われている

14級に認定される要件

次の場合、「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの」として第14級の9に認定されます。

  • MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められる