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転落・転倒事故による労災被害

転落・転倒事故は、典型的な労働災害の1つです。
主に建設現場や高所作業をおこなう現場のほか、工場など様々な職場で発生しています。

典型例

転落(墜落・落下)

  • 高所での作業中、足場の一部が崩れ転落した
  • 不安定な足場での作業中、バランスを崩し転落した
  • 床面に穴が空いていて、落下した
  • はしごの昇降中、足を踏み外して落下した

転倒

  • 床面が液体で濡れていたため滑り、転倒した
  • 台車に足をとられ、転倒した
  • 床面に設置されたコードや段差につまずき、転倒した

使用者・関連会社の責任

使用者への損害賠償請求

転落・転倒事故では、表面的な事故原因は「労働者本人の足下への注意不足」であることが多いです。
たとえば、床面の穴に気づかず落下してしまった、誤ってバランスを崩して転落してしまった、足下を見ていなくて障害物につまづき転倒してしまった、などのケースでは、一部、労働者本人のミスが原因と認められることもあります。
では、こうした事故は全て労働者本人の責任かというと、そうとは言い切れません。

次のように、会社の安全配慮義務違反によって労働災害が発生しているときには、会社にも責任が認められ、労働者は労災による被害について、損害賠償請求をおこなうことが考えられます(詳しくは:「会社への損害賠償請求」)。

安全配慮義務違反の具体例

たとえば、次のことが原因で事故が発生している場合には、会社に安全配慮義務違反があったと考えられます。

  • 胴ベルトなどの墜落制止用器具を使用させていなかった
  • 足場に不備があった
  • 耐滑性のない安全靴を使用させていた
  • 危険なはしごの使い方をさせていた
  • 床面が散らかっていたり、濡れていたりしていた

主なポイントは、会社があらかじめ

  1. 転落・転倒しづらい作業環境を整えていたか
  2. 適切な墜落防止措置をとっていたか

ということにあります。

ただ、上記の安全配慮義務違反があれば、直ちに会社から賠償してもらえるという単純な話ではありません。特に、労働者本人のミスが認められる場合には、責任の所在(または責任の割合)について、使用者側と労働者側の主張が大きく食い違い、激しい争いになることもあります。
個別のケースについて損害賠償請求が可能かどうかは、労働災害に詳しい弁護士にご相談ください。

複合的な事故の発生

転落・転倒事故は、時によって、機械への巻き込まれ・挟まれ・切断事故と複合的に発生することもあります。
たとえば、

  • 転倒したはずみで、稼働中の機械に接触・巻き込まれ負傷した
  • バランスを崩して巨大なミキサーの中に転落してしまい負傷した

ようなケースがあげられます。

この場合には、
①転倒・転落しやすい状況になっていたことの問題性
に加え、
②機械の危険領域へ身体が侵入しやすくなっていたことの問題性
も責任の所在を追及するうえでのポイントとなります。

大阪労災・労働法律事務所での解決事例

大阪労災・労働法律事務所で解決した転落(落下)・転倒事故のうち、一部の事例をご紹介します。

床の穴への落下

携帯電話基地局設置工事の現場で、資材搬出の作業中、床の一部に空いていた穴に落下し足を負傷、14級の後遺障害(感覚障害)を負った事故。
主な事故の原因(安全配慮義務違反)は、作業場の床面の穴を放置し、安全な作業環境を確保できていなかったことにありました。
残業代不払いもあったことから、損害賠償請求と同時に残業代請求もおこない、あわせて民事訴訟で解決することができました。

台車に足をとられての転倒

工場内を移動中、空の台車に足をとられて転倒し、腕や肩に可動域の制限が残る後遺障害を負った事故。
詳しくは「転倒による労災事故の損害賠償解決事例」で解説しています。

足場からの転落

高さ約8メートルのベルトコンベアの解体作業をおこなっていたところ、足場にしていた鉄パイプが腐食していたため折れ、作業員が転落し、脊椎をはじめ全身を負傷し、11級の後遺障害を負った労災事故。
主な事故の原因(安全配慮義務違反)は①転落防止の措置を講じていなかったこと②作業監督者を指名していなかったことにありました。
使用者側は、ベルトコンベアや足場の構造、作業内容について異なる主張をし、安全配慮義務違反は無いと主張しましたが、最終的に民事訴訟で解決することができました。

屋根の補修中に転落

ネジの製造に携わっている高齢の作業員が、会社の指示で未経験の屋根の補修作業をおこなっていたところ、落下して全身を負傷し、神経麻痺による上下斜視(10級の後遺障害)が残った事故。
主な事故の原因(安全配慮義務違反)は①高齢の労働者に対し、未経験の危険な補修作業をおこなわせたこと②何らの墜落防止措置を講じていなかったことにありました。
事故発生に至る経緯については、細部で双方に主張の食い違いがあったものの、会社の安全配慮義務違反があったことは否定のしようがなく、話し合いで解決することができました。