日本では、連日長時間残業をしたり、休日にも出勤したりする労働者が少なくありません。しかし、人間の体には限界があり、休息が十分にとれないことが、病気の発症につながることもあります。
過労死とは、長時間労働などの過重な労働による身体的負担のために、特定の脳や心臓の病気(脳・心臓疾患)を発症して亡くなる場合をいいます。
具体的には、労災では次の病気が対象疾病とされています。
①脳に関する病気
- 脳内出血(脳出血)
- くも膜下出血
- 脳梗塞
- 高血圧性脳症
②心臓に関する病気
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 心停止(心臓性突然死を含む。)
- 解離性大動脈瘤
なお、このページでは、一般的に使用されている「過労死」という言葉を使って説明をしていますが、対象疾病を発症した存命の方も同様です。
過労死にいたるまで
過労死は、十分な休息がとれないほど仕事に打ち込んだ労働者であれば、誰にでも起こりえる出来事です。
体力に自信のある方や、積極的に仕事をこなす元気な方であっても、ある日突然、病気を発症し、亡くなってしまうのが過労死の恐ろしいところです。
過労死は、労働者ご本人やご家族の意思だけでは防ぎきれません。一般的に、労働者は会社から仕事を与えられれば、それを拒むことは難しいからです。
ですから、会社には、労働者が働き過ぎに陥らないよう配慮をすることが求められているのです。
過労死は労災になります
「労災」というと、仕事中に怪我をする「労災事故」を想像される方が多いと思います。しかし、病気であっても、過労死は職場での過重な労働の末に引き起こされたものですから、厚労省によって労災として認められています。
なお、病気を発症したとき、仕事中であったか、また、職場にいたかどうかは問題にはなりません。休日、自宅にいるときに発症したからといって、労災が否定されることにはならないのです。
労災認定においては、病気を発症するまでの間、労働者がどのような過酷な働き方をしていたかが重要となります。
過労死の労災申請について、詳しくは、過労死の労災申請のページで解説しています。
会社による配慮の現状
「過労死」「過労自殺」という言葉は、メディアでも取り上げられるようになり、徐々に社会に浸透してきています。働きすぎの状態から脱却し、ワークライフバランスを求める動きも強まってきています。
一方で、会社による配慮や対策は、十分に進んでいないのが現状です。一部には、心身の限界まで働くことが美徳だとする「根性論」も根強く残っています。また、表面的には長時間労働を禁止する一方で、時間内に到底処理しきれない仕事を労働者に与え、持ち帰り残業をさせるケースも見受けられます。
過労死が起きてしまったあとも、病気による死であるために、労災であることが見過ごされやすく、会社が自ら労災申請することはほとんど無いと思われます。
過労死に関する手続き
過労死が起きてしまったとき、労災申請をして、認定をされれば、労災保険より様々な給付を受けることができます。
また、会社に対する様々なお気持ちがあれば、会社に対し損害賠償請求をすることもできます。
それぞれの手続きについて、詳しくは
のページをご覧ください。
なお、実務上、労災認定を得てから損害賠償請求をおこなうのが一般的な流れとされているため誤解しやすいところですが、労働基準監督署に対する労災申請と会社に対する損害賠償請求は別個の手続きです。
そのため、労災申請だけおこない、損害賠償請求はしないことも可能です。
会社に過労死を知ってもらうこと
働き過ぎが、脳・心臓の病気につながってしまうことは、会社・経営者の意識にはまだ十分浸透していません。「過労死」という言葉を知っていても、自らが激務をこなすタイプの経営者には、ピンとこないこともあるようです。
しかし、冒頭でも触れたとおり、過労死は誰にでも起こりうることです。労災申請などを通して、会社に過労死の存在を知ってもらうことは、大きな意味があるといえます。