労災認定と会社に対する損害賠償請求は、深いかかわりがあります。
会社に対する損害賠償請求額を計算するときに、労働基準監督署の認定内容を参考にすることが多いからです。
特に重要なのが後遺障害等級で、何級と認定されたかによって、慰謝料や逸失利益の額が左右されます。
そのため、労働基準監督署の認定内容に納得できない点があるときは、審査請求をすることが大切です。
また、事故内容についても、労働基準監督署が作成した調査資料などは、訴訟や労働審判における重要な証拠となります。
会社が、労災事故の発生原因などについて、労働基準監督署に虚偽の報告しているケースが多くありますが、そのような場合、できるだけ早くに誤りであることを労働基準監督署へ伝えるべきです。
ただし、労働基準監督署が事実と異なる事故内容に沿って認定をおこなったからといって、会社への損害賠償請求ができなくなるわけではありません。
丁寧に主張立証をおこなうことで、労働者側の主張を裁判所に認めてもらうこともできるので、一度ご相談ください。
労災保険を受給しても、雇用主の賠償責任は無くなりません
労災事故による損害賠償請求をすると、雇用主から「労災保険からお金が出たので、それで解決済みだと思っていた」という反応をされることがあります。 しかし、労災保険の支給は、労働者の収入の減少等、損害のごく一部を補償するものに過ぎず、怪我や後遺障害による精神的苦痛に対する慰謝料は、労災保険では補償されません。
また、雇用主の安全対策が不十分であったため労災事故が発生した場合にも、労災保険によって雇用主の賠償責任が消滅するとすれば、安全対策に関する雇用主の危機意識は弱まり、労災発生の抑止力の低下にもつながります。
損害賠償請求の中身のうち、休業損害や逸失利益の項目については、休業補償給付や障害補償一時金・年金等との調整がありますが、労災保険を受給したからといって、雇用主の賠償責任は無くなりません。
労働者は、労災保険を受給したとしても、雇用主に対して正当な賠償を求めることができるのです。