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残業代不払いの手口

会社が、様々な手口を利用することで、労働者への残業代の支払いをまぬがれようとするケースが後を絶ちません。
以下のケースに当てはまる場合には、未払の残業代が発生している可能性が高いといえます。

労働時間に関するごまかし

最もよく見られるのが、「残業は月○○時間までしか認めない」などとして、残業時間が一定の時間以内に収まるよう、実際の終業時刻よりも早くにタイムカードを押させたりする手口です。

管理が杜撰な会社では、そもそも労働時間を記録させていない(タイムカード・出勤簿が無い)こともあります。

時間外労働時間と割増賃金の計算は、当然、実際の労働時間に基づいて行われるべきものですから、タイムカードや出勤簿の記録が改ざんされていても、それ以外の証拠(パソコンのログ、出退勤の時刻のメモなど)から実際の労働時間を証明することができれば、時間外割増賃金の請求は可能です。

待機時間や研修時間も労働時間として扱われる場合があります

始業時刻から終業時刻までの間に待機時間があるとしてその時間を引いて労働時間を計算したり、業務時間外に行われる研修について労働時間と認めなかったりして、残業代の支払いを免れる手法もあります。

しかし、待機時間に特に業務がなかったとしても、その間、待機場所を離れることができず、何か業務が発生したときにはすぐに着手できる状態で待機していなければならないとすれば、待機時間も労働時間と評価されます。

例えば、以下の場合は労働時間と評価されます。

  • 昼休憩の間、デスクで待機し電話が鳴れば出なければいけない場合
  • 警備会社などで、仮眠が許されていても指令があればすぐに出動しなければならない場合 など

残業代の支払に関するごまかし

次のように、一見、給与明細書上は残業代が支払われているように見えるものの、その計算が法的な根拠にもとづいておらず、実は大部分の残業代が未払の状態になっているという場合もあります。

固定の残業手当を越える残業代を支払わない

長時間の残業をしているのに、固定の残業手当を支給していることを理由に、適正な残業代を支払わないケースがあります。この場合、実際の残業時間から計算される割増賃金の額が固定の残業手当を上回っている場合には、その差額を請求することができます。

さらに、「固定残業手当」という名目の手当が支給されていても、実質的には、残業代ではなく基本給の一部だと考えられることもあります。たとえば、基本給20万円の契約を結んだのに、一方的に基本給15万円と固定残業代5万円に振り分けられて支給されていたなどの経緯があれば、「固定残業手当」は残業代ではなく基本給であると評価することができます。

「基本給の中に残業代が含まれている」?

「固定残業手当」等の名目による支払はないものの、「基本給の中に残業代が含まれている」として残業代を支払わないケースもあります。
この場合にも、基本給のうち、どの部分が通常の賃金であり、どの部分が割増賃金であるかが区別されていない限り、基本給の中に割増賃金が含まれているものとは認められず、基本給とは別に割増賃金を請求することができます。

時給のごまかし

残業代の計算においては、時給がいくらかということが非常に重要となりますが、最近よく目にするのが、この時給に関するごまかしです。
たとえば、本来の時給は2000円なのに、給与明細書上では1000円であるかのように見せかけ、残業代の支給額を本来の半分(またはそれ以下)に抑えてしまう手法です。

諸手当の振り分けによる時給のごまかし

割増賃金の額を計算するには、通常、割増賃金の基礎となる賃金の額を所定労働時間数で割って時給を算定し、それに割増率と残業時間数をかけることになります。

この割増賃金の基礎となる賃金には、基本給、職能給、皆勤手当などが含まれますが、家族手当、住宅手当は含まれませんし、出来高払い部分(いわゆる歩合給など)については時給が大幅に低く算定されることになります。
そこで、会社が、賃金を基本給、職能給、家族手当、歩合給などの名目に細かく分け、一部を割増賃金の基礎となる賃金に含めなかったり、基本給などとは別の算定方法で時給を計算したりすることによって、時給と残業代の額を大幅に減らしてしまうことがあります。

しかし、割増賃金の基礎となる時給に含まれるかどうかは実質的に判断されるべきで、たとえば、名目が「家族手当」であっても、家族の人数と無関係に支給されている場合には、割増賃金の基礎となる賃金に含めなければなりません。また、名目が「歩合給」であっても、たとえばトラック運転手の配送量や営業職の契約件数のような出来高に応じて支払われる賃金でなければ、基本給などと同様に時給を算定するべきです。

固定残業手当について

「残業代の支払いに関するごまかし」の項目でも触れたとおり、「固定残業手当」が支給されていても、それは残業代の支払いではなく基本給の支払いにあたると判断されることもありますが、この場合、「固定残業手当」も基礎賃金に含めて時給を計算することができます。 つまり、「固定残業手当」を法的にどう評価するかによって、①既払いの残業代、②時給計算の2点に影響をあたえ、これらにより計算結果が大きく異なることとなります。

諸制度の悪用

実際には要件を満たしていないにもかかわらず「管理監督者」にあたるとして、管理職に時間外割増賃金を支払わないケース(いわゆる名ばかり管理職の問題)や、裁量労働制みなし労働時間制を悪用を悪用して、時間外割増賃金の支払いを免れるケースも散見されます。 それぞれの制度について、詳しくは各リンク先で解説しています。