積み荷の落下による下敷き事故の損害賠償解決事例

労災事故の発生


※プライバシー保護の観点から、事案の本質を損ねない範囲で変更を加えています。

Aさんは、派遣会社Xに雇用され、派遣先のY会社の製造工場で、製造された部品をカゴに収納し、手押し式電動リフトを用いて運搬する仕事をしていました。
次々と製産される部品を効率よく運ぶため、Y会社は、Aさんに、カゴをリフトに4段積み重ねて運搬するよう指示していました。

Aさんが、指示通り、4段に積み重ねたカゴをリフトで運搬していたところ、バランスを崩したリフトが転倒するとともに積み荷が落下し、Aさんは下敷きになってしまいました。
この労災事故により、Aさんは足に頑固な神経症状が残る後遺障害を負いました。

労働者側の主張

労働安全衛生に関する法律や規則には、会社に次のような義務があることが規定されています。

  • 機械による危険を防止するため必要な措置を講じる義務(労働安全衛生法第20条)
  • 荷役等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するために必要な措置を講じる義務(労働安全衛生法第21条)
  • 労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じる義務(労働安全衛生法第24条)
  • 労働者への安全教育を行う義務(労働安全衛生規則第35条)

これらの規定から考えて、Aさんに指揮命令して作業させていたY会社には、リフトや積み荷が不安定にならないよう適切な作業方法を指示する安全配慮義務がありました。しかし、Y会社の指示した作業方法では、積み荷の高さが2メートルに達し、重量が合計200kgを超え、リフトや積み荷が非常に不安定な状態になる危険なものでした。

また、Aさんの雇用主である派遣会社Xは、必要な安全教育をAさんに行っていませんでした。

労働者側は、こうしたX会社・Y会社の安全配慮義務違反によって労災事故が発生したと主張しました。

会社側の主張

会社側は、労災事故の経緯について、事実と全く異なる主張をしてきました。
Y会社は、カゴを2段に積み重ねた安全な状態でリフトを運転するよう指示していたのであり、Aさんもその指示に従って作業をしていた、と主張したのです。

その上で、Aさんの労災事故が起きた原因は、Aさんが積み重ねたカゴをきちんと固定していなかったことにあり、これはAさん本人の過失であるので会社に責任は無い、と主張しました。

労働者側の立証

労災事故直後、会社が作成した労災申請の書類や報告書においても、事実と異なる記載(Y会社の主張どおりの記載)がされていて、労働者側がやや不利な状況でした。
そこで、Aさんと共に働いていた労働者に協力を依頼し、Y会社工場ではAさんの言う危険な作業方法を指示されていたこと、労働者らはそれに従っていたことを証言してもらいました。

また、会社側が主張する事故内容には矛盾点が存在していたことから、丁寧にそれらを指摘し、あらためて、AさんがY会社より危険な作業方法を指示されていたこと、そのことが原因で労災事故が発生したことを主張しました。

裁判所の判断

裁判所は、X会社とY会社の安全配慮義務違反を認め、合計1000万円を超える賠償の支払いを命じました。

四方弁護士からのコメント

会社側が労働者と全く異なる主張をしたことから、当初、労働者に対する裁判官の心証はあまり良くなかったようです。しかし、協力者の証言を得て、丁寧な主張反論をおこなうことで、最終的に、労働者側の主張が正しいという判断をしてもらうことができました。

このケースのように、会社は、事実と全く異なる主張をすることが多くありますが、あきらめず、主張反論をしていくことが大切です。