不当解雇を解決する方法としては、任意交渉(話し合いによる解決)のほか、裁判所を利用する手続きとして次の3つがあります。
- 民事訴訟
- 仮処分申立
- 労働審判
任意交渉(話し合い)
まずは会社へ内容証明を送り、任意交渉(話し合い)での解決を探ります。
解雇は、法律上明らかに不当であるケースが少なくなく、弁護士が介入することで、話し合いのみで金銭解決できる場合もあります。
会社が強硬な姿勢で解雇の不当性を認めようとしない場合や、提示された金銭解決の水準が低すぎる場合には、裁判所を利用した手続きに移行します。
裁判所を利用した3つの手続き
①民事訴訟
民事訴訟は、3つの手続きの中で、最も「本格的な」手続きといえます。
多くの場合、「従業員としての地位の確認」と「解雇されたことによって働けなかった期間の賃金の支払い」を求めて提訴します。
また、解雇の経緯が悪質である場合には、これに加えて「解雇されたことによる労働者の慰謝料」を請求することもあります。
地方裁判所に提訴してから判決までは、1年~1年半ほど要します。
労働者が勝訴しても、会社がこれを不服として高等裁判所に控訴すれば、高裁の判決が出るまでさらに1年~1年半ほどかかります。
ただし、地裁・高裁の審理中に、裁判官から和解案が提示され、これに両者が合意すれば和解で解決できることもあります。
*メリット
・会社側が復職を嫌がっている場合でも、とことん争うことができる
・長期間をかけてじっくり審理してもらえるので経緯が複雑なケースでも対応できる
*デメリット
・手続きが長期化しやすく、労働者の精神的な負担、経済的な負担が大きい
・復職を目指す場合、争っている間、他の会社で正社員として働くことは困難
②仮処分申立
仮処分申立とは、緊急性が高い事案について、裁判所に「仮の判断」を出してもらう手続きです。
申立から決定まで、1~2か月と非常に手続きが速いのが特徴です。
不当解雇では、主に「会社の従業員であることを『仮に』定める」ことと「給料の『仮』の支払い」を求めます。
これが認められれば、当面の間、会社から「仮の」給料の支払いを受けることができます。
ただし、あくまで「仮の」決定ですから、確定的なものではなく、将来的に訴訟に移行したときも、必ず労働者の地位が認められるとは限りません。
*メリット
・決定が下されるまでが非常に速い
・当面の生活費を確保できる
・会社は給料を払い続けなければならないため、早期解決のプレッシャーにもなる
・審尋の場で、会社と和解ができる場合もある
*デメリット
・緊急性が高い事案に限られるので、仮処分の必要性が無いケース(貯金が十分にあるなど)では、利用できない
・解雇の慰謝料を求めたり、他の労働問題(労災・未払い残業代)を一度に解決することにはなじまない
・仮処分が認められた後、訴訟で解雇が有効と認められてしまった場合には、仮に受け取った給料は返還しなければならない
③労働審判
労働審判は、3回の期日で3か月以内の解決を目指す手続きです。
労働者本人、労働者側弁護士、会社の人間(事情をよく知る上司等)、会社側弁護士、裁判官、審判委員が出席し、顔を合わせた状態で審理が進みます。
多くの場合、第一回期日において、和解案が提示されます。
たとえば、「バックペイ(解雇からその時点までの給料)+将来分数ヶ月分の給料」に相当する額が解決金として提示されます。
これに双方が納得すれば和解ができます。
和解に至らなかった場合には、審判が下されるか、労働審判での解決は困難として訴訟に移行する決定が下されます。
*メリット
・解決までが訴訟よりも速く、労働者の負担が比較的少ない
・労働審判で納得のいく解決ができなかった場合には、訴訟に移行できる
*デメリット
・審理が短いため、経緯が複雑な事案には向かない
・決裂すると訴訟に移行するため、強く復職にこだわる場合には、初めから訴訟を利用した方が良い
どの手続きが良いかはケースバイケース
民事訴訟、仮処分申立、労働審判のいずれを利用するのが良いかは、解雇に至るまでの経緯や、どれだけ復職を強く希望されるかによって変わります。
そのため、一概に「この手続きが良い」と言えるものではありません。
最終的な目標をどこに設定するかによって、適した手続きをとることが大切です。
弁護士 四方久寛(大阪弁護士会所属)