「不当解雇を争う」と一言にいっても、「どの点について」「どのように争うか」その方法は様々です。
不当解雇されたときに、請求できるもの
まずは、請求することが考えられる主な点をご説明します。
①労働者としての地位の確認を求める
解雇されたとき、会社側は、「解雇したのだから、あなたは今後うちの従業員ではありません」という立場になります。
しかし、解雇が正当でなければ、解雇は無効となり、「解雇された」という事実自体が無くなります。この場合、労働者は、引き続き会社に在籍しているという「地位」があるということになります。
このように、労働者としての地位があることを裁判所に認めてもらうことを「地位確認」といいます。
②賃金の支払いを求める
不当解雇をされた場合、労働者は、「働きたい」という意思を有していても働けなくなり、また、給料も支給されなくなります。
解雇が無効である場合、会社の落ち度でこのような事態が生じたわけですから、労働者は、権利として解雇されてからの給料(賃金)の支払いを求めることができます。
この場合、次の両方の支払いを請求できます。
・解雇されてから裁判所の判決(決定)が出るまでの間
・判決(決定)が出て以降、毎月給料日の給料の支払い
③慰謝料を求める
正当な理由無く解雇されるのは、労働者にとって不名誉なことであり、解雇に対する慰謝料が発生します。
ただし、一般的には、不当解雇について認められる慰謝料の額は、それほど大きくはありません(せいぜい基本給の2、3か月分)。
もっとも、労働者に全く非が無いにもかかわらず懲戒解雇をされたり、労働組合員を排除する目的で解雇がなされるなど、解雇の経緯が特に悪質である場合には、慰謝料の額は比較的大きくなります。
争う場合の方針
方針としては、主に次の3つが考えられます。
①復職できるまで争う
雇用主が労働者の復職を嫌がってとことん争う場合には、高等裁判所の判決まで争わなければならず、解決までに少なくとも3年以上を要することになります。そのため、労働者にとっては非常に負担の重い方針と言えるでしょう。
②慰謝料のみを請求する
当初から復職は求めず、不当解雇についての慰謝料のみを請求することになります。この方針は、労働者にとって最も負担の小さい方針ですが、一般的には、不当解雇について認められる慰謝料の額は、それほど大きくはありません。
また、復職を求めないため、雇用主にとってもあまりプレッシャーがかからず、雇用主に早期解決を促すことができません。
③復職と解決金のどちらかによる解決を探る
復職を求めながら、ある程度の解決金の支払いが得られる見通しが立てば、復職を諦める代わりに解決金の支払いを受ける方針です。
復職した場合のメリットと、金銭解決することのメリット、両者のバランスを考えながら解決を探ることができ、最も現実的な方針であると言えます。
弁護士 四方久寛(大阪弁護士会所属)