新規相談受付の停止について

不当解雇で会社と和解するときの金銭解決の水準

「給料○か月分が相場」は信用しないこと

不当解雇を争い、会社と和解するときの解決金の水準は、ケースによって様々です。

たまに、相談者の方が「給料○か月分が解決金の相場だとネットで見ました」と仰ることもありますが、その種の情報は根拠が乏しく、あまり鵜呑みにしない方が良いでしょう。

解決金の額は、「解雇されてから解決までの間に、どれほどの期間を要したか」によって大きく左右されます。

「バックペイ」という解雇特有の考え方があるからです。

バックペイとは、解雇されてから和解するまでの間の給料相当額を指すものです。

例えば、解雇されてから現在まで既に4か月が経過している場合、労働者側の立場としては、「バックペイ4か月分」は最低限支払われるべきものとなります。

そして、ここから就職活動をして実際に新しい会社で働き始めるまでは多少の期間が必要となるわけですから、それを見越して、将来分の給料として何か月分が支払われるかが問題となります。

単に「給料の8か月分で和解した」といっても、それが解雇から2~3か月時点でのことなのか、それとも8か月が経過した時点での和解なのかで、労働者が受ける経済的メリットは全く異なるのです。

ですから、これらの点を考慮せず、単純に「給料○か月分が相場」とする情報は全くアテにはなりません。

常に「給料○か月分」として和解するわけではない

和解というのは、両者の自由な意思によっておこなうものですから、解決金の額について厳格なルールが決められているわけではありません。

不当解雇の場合には、慣習上、「給料○か月分」をベースとして弁護士が交渉することが一般的ですが、これは単なる目安であって、諸般の事情を勘案して、さらに解決金額を調整することが多いです。

また、合意書(示談書)には、「給料○か月分の支払い」とは書かず、「解決金○万円」などとのみ記載することが通常です。

解決金が高額になりやすい事案

バックペイに加え、将来分の給料がどれだけ解決金に加えられるかというのは、事案の性質と、それを踏まえて弁護士がどこまで的確な主張をおこなえるかによって左右されます。

解決金が高額になるケースとしては、次のような事情があげられます。

  • 解雇の経緯が悪質であった
  • 正当性のない懲戒解雇など、労働者の名誉を著しく傷つけるものであった
  • 勤続年数が長く、会社への貢献度が大きかった
  • 労働者が復職を希望していたが、会社が強く忌避した
  • 解雇から解決まで長期を要し、労働者の損失が大きかった
  • 不当労働行為があった
弁護士 四方久寛(大阪弁護士会所属)