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証拠保全 ―資料収集の手続―

証拠保全とは

労働問題が発生し、労働者が雇用主に対して何らかの請求をするときや、労災を申請するときには、その請求内容を裏付ける資料(労働の実態や労働時間などを証明する資料。例えばタイムカードなど)が必要となります。

しかし、それらの資料は雇用主が管理し、会社や事業所に保管されており、労働者の手元にあることは希です。そこで、重要となるのが証拠保全という手続です。

証拠保全とは端的に言うと、裁判所を通じて雇用主に必要な資料の提示を求める手続です。まず裁判所に申立てをし、一般的には裁判官と労働者側の弁護士らが、該当の資料が存在する事業所に行って資料を提示させ、そのコピーや写真をとることで資料を入手します。証拠保全が行われることは事業所には直前まで知らされないため、証拠資料が隠滅される危険を回避することができます。

例えば、このような資料を入手することが考えられます

労働時間を立証するためのもの

  • タイムカード
  • 出勤簿
  • パソコンのログ(プログラム機動のオン・オフから労働時間を推定)
  • セキュリティの記録(入退室の記録から労働時間を推定) など

仕事の状況や職場の環境を立証するためのもの

  • 業務日報
  • 会議の議事録
  • メールのデータ など

これらの証拠は、裁判のほか、労災申請の証拠としても用いることができます。

その他の特徴

  • 証拠資料が破棄・隠匿される前に証拠を保全することを目的としているので、申立から実施まで1,2ヶ月と短期間で手続が終了します
  • 実際に事業所に行くため、将来の裁判や労災申請に備えて、職場の雰囲気を把握しておく意味もあります。

過労を原因としてご家族が亡くなったと考えられるとき

ご家族が過労を原因として亡くなったと考えられる場合、証拠保全の手続は更に特別な意味をもちます。
過労で亡くなる方は真面目な方が多く、仕事が辛くても、家族には心配をかけまいとして愚痴をほとんど言わずに耐える傾向にあるため、遺されたご家族の方は死の原因が仕事にあったのか確信が持てず、なぜ亡くなってしまったのか心の整理がつかないということがしばしば起こるからです。 このような場合に、証拠保全で資料を集めることは、結果的に、ご家族が故人の労働の実態を知り、死の原因がどこにあったのかを知る手がかりにもなります。

場合によっては、メールのやり取りや会議の議事録、日報などを入手できますから、そのような資料を通じて、本人がどのような環境でどのような仕事をこなし、どれだけ働いていたのか、また、どのようなことを考えながら仕事をしていたのかということを知ることができます。

「過労死を疑っているけれど、本当に仕事が原因かどうかはっきりは分からない」「仕事の内容や労働条件などを詳しく知らない」「現時点では裁判をするかどうかまでは決められない」という方も、一度証拠保全の手続を利用して、資料を集めてみることをお勧めします。