外国人労働者の現状
現在、日本には、200万人以上の外国人が生活しています。その多くが、日本人と同じように企業に雇用されて働いています。
外国人にも、日本人同様、労働法による保護が与えられています。しかし、実際には、外国人は、日本人よりも劣悪な労働環境に置かれていることが多く、外国人労働者をめぐってはさまざまな問題が生じています。
労働基準法違反の行為が数多く発生しています
外国人にも労働法が適用されますから、外国人を雇用する雇用主は、労働時間、賃金、休日等に関する労働基準法の規制や、最低賃金の規制を遵守しなければならないことは当然です。
けれども、実際には、適正な額の割増賃金が支払われていなかったり、賃金からの違法な控除が行われていたりするケースが少なくなく、ひどい場合には、最低賃金を下回る賃金しか支払われていないケースすら見られます。また、有給休暇をとることを認められていないケースも多く見られます。
多発する労災事故
外国人が就労する職場は、日本人が敬遠するいわゆる3Kの職場が多く、いつ労災が起きてもおかしくないような危険な労働環境が目立ちます。機械に安全装置が取り付けられていなかったり、安全対策のないまま危険な作業環境で作業をさせられていたりしたために、機械に巻き込まれて指など身体の一部を切断したり、機械や製品の下敷きになるなどして重い後遺症を負ったりする労災事故が頻発しています。
さらにひどいことに、外国人の場合、雇用主が労働基準監督署に労災事故を届け出ず、労働者が労災保険による補償を受けていない場合も少なくありません。
外国人であっても、労災申請・損害賠償請求はできます
外国人であっても、またいわゆる不法就労の外国人であっても、労災保険の適用は受けることができ、雇用主に対して安全配慮義務違反ないし不法行為に基づいて損害賠償を請求することもできます。
ただし、いずれ帰国することが予想される外国人については、損害賠償のうち逸失利益(労災事故がなければ将来得られたであろう収入)の額を算定するにあたり、母国の経済水準等を考慮する考え方がとられており、日本人に比べて低い額の損害賠償しか認められないケースが多く見られます。
また、外国人の場合、業務請負会社に雇用されて、別の会社の工場で就労していることがよくあるのですが、雇用主が零細で労働者の受けた損害を十分に賠償できないにもかかわらず、就労先の事業主が雇用主ではないことを理由に損害を賠償しようとしないケースが非常に多く見られます。
しかし、就労先の事業主は、たとえ雇用主でなくとも、労働者を指揮・命令して就労させていた以上、労働者に対して安全配慮義務を負い、労働者の受けた損害を賠償しなければならないものとされています。
不当解雇
外国人の場合、ただでさえも期間雇用や派遣労働といった不安定な雇用形態で就労している労働者が多いうえに、何ら理由なく解雇されてしまうケースが多いように思います。
就労に基づく在留資格で日本に在留している外国人の場合、解雇は、在留資格の喪失につながります。したがって、解雇は、単に生活の基盤を失うことのみならず、日本に居住し続けられなくなることを意味します。
平成24年の改正出入国管理及び難民認定法の施行により、外国人に所属機関の変更を届け出る義務が定められたことで、その傾向はいっそう強まるものと思われます。このような状況の下、在留期限との関係で、どのような手段で不当解雇を争い、どのようなタイミングで新たな就職先に移るか、慎重に選択することが必要になります。
また、近年、雇用主の指示によって、必ずしも在留資格に見合わない業務に従事させられていた結果として,在留期間の更新が受けられず、就労が続けられなくなるケースが増えています。多くの場合、そのような就労不能状態を招いた責任は雇用主の側にあると考えられますが、その点について判断した裁判例はまだありません。
外国人労働者の支援者の方へ
外国人の労働問題には、労災事故のケースの損害額の算定や直接の雇用主ではない就労先の事業主への請求の理論構成、不当解雇のケースの在留資格との関係など、通常の労働問題とは異なる特殊な問題もあります。
外国人労働者の支援に携わっておられる団体・個人の方は、是非、大阪労災・労働法律事務所までご相談ください。
四方弁護士が主宰するマイグラント研究会のホームページには、英語・中国語・ポルトガル語・ベトナム語の法律解説もあります。
外国人の方・外国人の支援者の方は、あわせてご参考になさってください。