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過労死の公務災害が認定されました-労働弁護士コラム

特別職の国家公務員が急性心筋梗塞でお亡くなりになったのは、著しい身体的負荷を生じさせる労働及び長時間労働が原因であるとして、公務災害の認定を求める手続きをおこなっていた件で、この度、公務災害(過労死)であると認められました。

「公務災害」というのは聞き慣れない方も多いと思いますが、一般の「労災」にあたるものです。
会社に勤める労働者であれば、過労死が起きた場合には「労災」となり労災保険を受給することができますが、公務員の場合、「公務災害」といい、労災とは異なる法律を根拠に様々な補償が支給されます(根拠となる法律は、職種により異なります)。

過労死をはじめ、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患に関していえば、「労災」も「公務災害」も、認定基準は概ね同じです(申請先や手続きの流れは少し異なります)。

プライバシーの観点から詳細は伏せますが、本件は、当初は公務災害ではないと判断され、不服を申し立てた(労災でいうと労災申請に近い)ところ、やっと過労死と認定されたものです。
直前1ヶ月の時間外労働が100時間を超えており、また、業務内容も相当身体に負荷のかかるものであったことから、過労死と認められやすい事案だったのですが、それでも当初は「業務内容の密度がそれほど高くない」という理由で公務災害ではないと判断されてしまったのでした。

証拠資料上、これは不当な判断でしたので、ご家族にも「この件は絶対に過労死認定されるべきなので、不服の手続きを進めた方がよいと思う」とお話しし、不服の手続きにおいて、業務内容の密度が高かったことを各資料をもとに主張しました。
最悪の場合、行政の判断では認定されるのは無理で、行政訴訟に持ち込んで裁判所の判断を仰ぐ必要があるかもしれないと感じることもありましたが、そうなる前に認定されてほっとしています。

公務災害は、労災に比べて調査に非常に時間がかかる傾向にありますが、本件も例外ではなく、証拠保全から今回の認定まで、6年近くも要しました。
手続きが長期にわたり、ご家族は落ち着かない気持ちもおありだったでしょうが、そのような中でも信頼して待っていてもらえて良かったと思います。

本件は、お亡くなりになってからご相談までが非常に早かったのも特徴で、証拠保全においてパソコンのログが収集できたのが効果的でした。
パソコンのログは、短期間で次々とデータが消えてしまい、設定にもよりますが半年ほど経ってしまうと、必要なデータは全くとれないということもあります。
本件も、パソコンのログが無ければ労働時間を立証しきれず、過労死と認定されなかった可能性が大きいです。

とはいえ、突然死が起きた直後、混乱した中で慣れない弁護士に相談するのはハードルが高く、なかなか考えられることではないと思います。
経験上、早い段階で相談に来られたケースは、信頼できるご友人や親族の方のサポートによるものであることが多いです。

最後に、本件のように、過労死・過労自殺の案件では、「これは認められるべきだろう」というものも、何かと理由をつけて不認定となってしまうことがあります。
行政段階の判断、特に一番最初の決定の段階では、担当調査官の個性によって判断に相当程度ばらつきがあるように感じます。
このような中でも、可能性があるものに関しては、諦めず積極的に不服の申し立てをおこなうことが大切です。

2019年3月20日
弁護士 四方久寛(大阪弁護士会所属)