「弁護士」というと、皆さんにとってどのような存在でしょうか?
あまり具体的には想像がつかない、という方が多いと思います。
よく言われるイメージとしては、 「困ったときに味方になってくれる人」という良いものもあれば 「金儲けに没頭する悪徳弁護士」のような悪いものもあり、 また、「奇妙・奇天烈」といったものもよく耳にします。
実際、弁護士にはいろんなタイプの人がいて、 それぞれが多岐にわたる活動をおこなっています。
「弁護士って、どんな人?」という問いかけに対する答えは 一口では言えませんが、 我々弁護士がいったいどのような存在なのか、このコラムで 少しでも身近に感じていただければ幸いです。
弁護士の性格・人柄について
弁護士の性格には、「真面目」「気むずかしい」といった傾向があるとよく言われます。
確かに、そういった言葉が似合う人も多いですが、 穏やかな人、明るい人、物腰の低い人、ひょうきんな人のように 「弁護士らしくない」人もたくさんいます。
そもそも、弁護士というのは、
皆が幼少のときから弁護士になることを決心しているわけではありません。
むしろ、普通に生活をしていく中で、ふとしたことがきっかけで
弁護士になろうと志す人の方が多いという印象です。
私もその一人ですが、社会人を経てから弁護士になった人も少なくありません。
ですから、弁護士というのは 「弁護士になるべく生まれてきた特殊な人たち」ではなく 「何かがきっかけで弁護士になった普通の人たち」なのです。
なかなか、「いろんな弁護士がいます」と言われても ピンとこないという方もいらっしゃるでしょうが、 そういうときは一度、お医者さんに置き換えて考えてみていただければと思います。
いままで、「何人もの弁護士と話したことがある」という人は少数派だと思いますが、 「何人もの医師に診察してもらったことがある」という人は多いはずです。
それらのお医者さんを思い出してみてほしいのですが、 固い雰囲気の人もいれば、物腰の柔らかい人、 明るい人、気むずかしい人、子供をあやすのが得意な人、 いろんなお医者さんがいたのではないでしょうか。
普段あまり接しない弁護士だとどうしてもイメージが偏りがちですが、 弁護士も医師と同じで、「いろんなタイプの人がいる」ということを まずは分かっていただければと思います。
弁護士の仕事について
さて、それでは弁護士は一体どのような仕事をしているのでしょうか。
皆さんが真っ先に想像するのは
「法廷で弁護をする人」といったところでしょうか。
それも一つの仕事ではありますが、 弁護士はいつも法廷にいるわけではありません。 (私も複数の労働事件を抱えていますが、裁判所にいるのは業務全体のごく一部です。)
まず、弁護士の主な業務としては、
①相談対応
②依頼を引き受けた事件の処理
があります。
(それぞれの説明は少し長くなるので、またの機会にします)
特に何をしている時間が多いのかというと、 これは弁護士の取り組む分野にも左右されるのですが、 私が取り組んでいる労働問題の場合、特に時間を割かなければいけないのが 書面作成です(上記の②の部分)。
書面作成は大変
弁護士は「弁が立つ」のがとにかく重要と思われがちですが、 それと同様、場合によってはそれ以上に「良い書面が作成できるか」というのが重要です。
裁判官は、弁護士が提出した「主張書面」を読んで 原告・被告の言い分のどちらを認めるか判断しますし、 相手方との任意交渉でも きちんと説得力のある書面が作成できれば、 任意交渉で良い解決ができる可能性が高くなります。
というわけで、弁護士は 依頼者から聞き取りをしたり資料とにらめっこをしたりしながら書面を作成するのですが
- 明確に主張ができていて
- 根拠をしっかり示せていて
- 法的な理屈もきちんと通っている
と三拍子そろった書面を完成させるのはとても大変で、 書いては消し、また書いては消し、 やっと完成に近づいたと思ったら思わぬところから新しい情報が出てきて また書き直し…ということもあります。
もちろん、労働問題だけではなく、他の分野でも書面作成は中心になることが多いです。
弁護士の仕事の多様性
弁護士は、相談・依頼業務以外にも多岐にわたる活動をおこなっています。
一般の人にも感心をもってもらえるよう講演をおこなったり、
よりよい法律ができるよう改正を働きかけたり、
メディアを通じて啓蒙活動をするなど、
「事後の問題解決」だけではなく「問題発生の事前予防」という観点からも
活動をおこなっています。
ほかにも、ここには書ききれないほど
様々な分野で、多様な活動がおこなわれています。
これは、いろいろなタイプの弁護士がいるからこそ成り立っていることだと思います。
皆さんにとって、弁護士は遠い存在かもしれませんが、 少しはお役に立てることもあるので、 何かトラブルを抱えたときには、一度相談してみていただければ幸いです。
弁護士 四方久寛(大阪弁護士会所属)