解雇・雇止め・退職の違い
当事者の意思で雇用契約が終了する場合には、解雇、雇止め、退職の3つがあります。
- 【解雇】 雇用主の側から、期間の定めのない雇用契約を解除する場合や、期間の定められた雇用契約を期間の途中で解除する場合
- 【雇止め】 期間の定められた雇用契約の期間が満了し、それ以上契約が更新されない場合
- 【退職】 労働者の側から雇用契約を解除する場合
このような場合には、解雇はできません
雇用主は、労働者を解雇する権利を持っていますが、解雇は労働者の生活の糧を奪うものですから、無制限に認められるわけではありません。 たとえば、
- 労働者が労災によって休業中とその後30日間
- 産前産後の休業期間とその後30日間
は労働者を解雇することができないとされています(労働基準法19条)。 また、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときにも、解雇権を濫用したものとして無効になります(労働契約法16条)。
~例~
- 身内の不幸を理由に数日欠勤したことを理由とする解雇
- 営業成績が他の従業員よりやや劣ることのみを理由とする解雇
一定の条件を満たさなければ整理解雇も無効となります
業績が不振で人員を削減する必要があることを理由に、雇用主が労働者を解雇する場合があります。これを「整理解雇」といいます。けれども、整理解雇も無制限に認められるわけではありません。 整理解雇の場合には、
- 人員削減の必要性があること
- 解雇を回避するための努力を尽くしたこと
- 解雇する労働者の選定に合理性があること
- 解雇する労働者への説明を尽くしたこと
という4つの条件を満たしていなければ、解雇権を濫用したものとして解雇は無効です。
懲戒解雇は就業規則に基づかなければなりません
雇用主が懲戒処分として労働者を解雇することを、「懲戒解雇」といいます。
懲戒解雇の場合には、退職金が支給されない等の不利益を伴うことが多いため、懲戒解雇事由を定めた就業規則に基づいて適正になされない限り、懲戒解雇は無効となります。
雇止めの場合でも無効になるケースがあります
雇止めについても、一定の場合には、解雇と同様の制限があります。つまり、
- 有期労働契約が反復して更新され、契約を更新しないことが、労働者を解雇することと社会通念上同視できる場合
- 有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある場合
に労働者から契約更新の申込みがあると、更新を拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときには、使用者は、従前と同一の労働条件で契約更新の申込みを承諾したものとみなされます(労働契約法19条)
退職勧奨への対処
不当解雇とよく似たケースに、雇用主から退職を迫られて、やむを得ず退職を申し出てしまうケースがあります。
しかし、解雇が雇用主からの一方的な行為であるのに対して、退職は雇用主と労働者との合意によるものとされるため、その効力を争うことは非常に難しくなります。退職の意思表示が錯誤によるものとして無効であるとか、強迫によるものとして取り消すとかいった主張をしなければならず、これらの主張はなかなか認められないからです。
したがって、雇用主から退職勧奨を受けたときには、言われるままに退職届を出すのではなく、まずは弁護士に対処方法を相談したほうがよいでしょう。