労働組合とは
皆さんは「労働組合」ってどのようなものか、ご存知でしょうか。
労働組合とは、労働者が、主として、労働条件の維持・改善といった経済的地位の向上を目指して結成する団体のことです。
かつて、1970年代には、日本の全労働者の35%前後が労働組合に加入していましたが(この比率を組織率と呼んでいます)、2000年以降は、その比率が20%を下回る状態が続いています。公務員や大企業の労働者の組織率が高いことを考えれば、中小企業の労働者の組織率はそれよりさらに低いということになります。
日本の労働組合は、各企業ごとに組織されている企業別組合が中心です。ただ、そうした労働組合の中には、ナショナルセンターと呼ばれる労働組合の全国中央組織の傘下に入っているものも少なくありません。
現在、日本のナショナルセンターには連合、全労連、全労協があり、単に労働者の経済的地位の向上を図るだけではなく、それと関連する政治的主張を持っています。
また、近年では、ナショナル・センターが組織する、個人加入の可能な、コミュニティ・ユニオンとか地域労組とか呼ばれる労働組合の活動も活発になっています。これには、派遣先の会社の労働組合に加入することのできない派遣労働者が増えたことも影響しているのではないかと思われます。
なお、弁護士の中には、特定のナショナル・センター傘下の労働組合との関係が強い弁護士も少なくないと思いますが、私の場合には、いずれのナショナル・センターの傘下にある労働組合からも相談をお受けしていますし、いずれのナショナル・センターにも属さない企業別組合からも相談をお受けしています。
なぜ労働組合か?
近年は労働組合の活動が低調で、労働組合のない職場も多いことから、特に年齢の若い方を中心に、労働組合についてイメージが湧かないという方も少なくないと思います。
しかし、現在でも、労働組合が労働条件の維持・向上に果たしている役割は小さくはありません。
たとえば、毎年春になると、各ナショナル・センター傘下の労働組合を中心に、春闘と呼ばれる労働運動が行われています。これは、給与をはじめとする労働条件について、さまざまな産業分野で相次いで行われる労働組合と会社との交渉です。春闘を通じて、多くの企業のその年の賃上げの水準が決定されています。
また、最近ではほとんど見られなくなりましたが、以前は、春闘での労働組合と会社との交渉がまとまらないときには、鉄道などで労働組合がストライキを決行することもしばしば見られました。
もしこのような労働組合の活動がなければ、職場の状況はもっと違ったものになるでしょう。
職場環境の整備に熱心な会社(従業員が働きやすい職場を作ることが会社の利益にもなるということを理解している会社)なら良いのですが、そうでない会社に対しては、労働条件や職場環境の問題点について労働者自身が声を上げなければ、職場の状況は改善されません。
しかし、個々の労働者が声を上げることには相当な勇気が必要です。労働者は、会社から給与を支給されて生活しているため、会社との関係では立場が弱いのです。声を上げた労働者が職場から浮いてしまわないためには、職場の多くの労働者が一致団結して声を上げ、職場の状況を改善するために取り組むことが重要なのです。
だからこそ、基本的人権の一つとして労働者が労働組合を結成する権利として団結権が保障され(憲法第28条)、労働組合法によって労働組合の活動の保護が定められているのです。
労働組合結成の手続き
では、労働組合はどのようにして結成するのでしょうか。
労働組合は、最低2人の労働者がいれば結成することができます。
ただ、労働組合の意味は、職場の多くの労働者が一致団結して、会社に対して様々な要求を受け入れさせるところにあるわけですから、職場の労働者と対話を重ね、なるべく多くの労働者が加入してくれるよう働きかける必要があります。
また、労働組合として活動していくためには、労働組合の組織、意思決定方法、財政などのあり方を定めた組合規約や、労働組合結成後の活動方針、予算、役員などが必要になります。そこで、労働組合結成の中心となる労働者らで、組合規約、活動方針、予算、役員の案などを準備します。
こうして、労働組合結成の準備が整ったら、労働組合に加入する労働者(組合員)らが集まって結成集会を開き、組合規約、活動方針、予算、役員について話し合い、決定します。
これで労働組合の結成手続きは完了です。
その後は、組合員から組合費を徴収して労働組合の財政基盤を確立するとともに、労働組合を結成したことを会社に通告したうえで、労働者の要求を会社に示し、それらについて団体交渉を申し入れるなど、労働組合としての活動を開始することになります。
労働組合を結成するにあたっては、ナショナル・センターの傘下に入る前提で、労働組合結成のノウハウを持っているナショナル・センター傘下の既存の労働組合の指導を仰ぐ方法もあるでしょうし、弁護士などの助言を受けながら、ナショナル・センターから独立した職場独自の労働組合を一から作っていく方法もあるでしょう。