過労死・過労自殺を知ってもらう意義
近年、メディア報道で、過労死・過労自殺に関する報道を目にすることが多くなりました。
特に、電通で働いていた若い女性社員が自殺してしまった事件は、大変大きく取り上げられ、記憶に強く残っている方が少なくないと思います。
この様に、報道されることによって、皆さんに「仕事が原因で死に追い込まれてしまうことがある」ということを知ってもらうのは、メディアの意義のひとつです。
センセーショナルになりがちな報道
一方で、メディア報道を見ていて、少し疑問に感じることもあります。
それは、ややセンセーショナルになりがちだということです。
特に過労自殺の場合にはそれが顕著です。
過労自殺として労災認定された事案の多くは、「長時間労働」と「出来事(職場における人間関係のトラブル・過大なノルマなど)」の二つの側面が合わさって起こるものです。
そして、現行の労災認定基準では、「長時間労働の有無」が非常に重要となります。
長時間労働が無かった場合でも、心理的負荷の強い出来事(業務指導を逸脱する酷いいじめ等)があった場合には、労災認定されることもありますが、認定のハードルは高くなります。
報道されている事案でも、ほとんどは「長時間労働」「いじめなどの出来事」の両方があって労災認定されているか、労災手続き上は長時間労働のみを理由として労災認定されているのですが、記事では長時間労働にはあまり触れられず、「どのような嫌がらせをされていたか」「上司はどれほど酷い人間であったか」という点にスポットが当てられがちです。
もちろん、職場におけるトラブルが労働者にとってストレスなのは間違いないですが、あまりにも長時間労働の問題を軽視しているのではと感じることも少なくありません。
日本では、長時間労働が未だに当たり前とされる傾向が強いですが、医学的に、心身への負担が強いことが認められています。
長時間労働は、それ自体が健康被害を招くものであるということを啓発しなければ、過労死・過労自殺は無くせません。
メディアに取り上げられるのは稀なケース
最後に、労災申請や会社に対する損害賠償請求をお考えの方に知って欲しいのは、「家族がメディアの取材を受けることは稀である」ということです。
メディアで大きく取り上げられるようなケースは、基本的にご遺族・弁護士が自ら記者会見を開いているものです。
誤解されることが多いですが、労災申請をしたり損害賠償請求をしたからといって、マスコミが自宅に押し寄せる…ということはありませんから、安心していただければと思います。