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塾業界における残業代不払いの特徴

学習塾の業界は残業代不払いの多い業種の一つです。

問題の背景

少子化による生徒の獲得競争が激しく、少しでも多くの生徒を獲得するため、職員は、一人一人の生徒にオーダーメイドの学習指導をしたり、学習指導以外でも生徒を最寄り駅まで見送るなど、きめの細かいサービスを提供するよう要求されているため、職員の労働時間が長時間化しています。

他方、塾は、多くの生徒を獲得するため、受講料を安く設定せざるを得ません。そのしわ寄せが、残業代をきっちりと支払わず、人件費を抑制するという間違った形で現れているものと思われます。

いくつもの校舎を抱える中規模以上の学習塾は、正社員の講師を各校舎に配置してその運営にあたらせ、本部で各校舎の業務を統括しています。また、正社員の講師は、各校舎の運営にあたるとともに、塾全体に共通の教材作成等の業務にもあたらなければならず、重い業務の負担を負っているのが一般的です。

塾業界の特徴

労働時間の管理がおざなり

塾は、正社員の講師の労働時間をきちんと管理していないことが少なくありません。
たとえば、自身の担当する校舎での勤務についてはタイムカードがあっても、別の校舎で授業を担当したり、本部に教材や書類を取りに行ったり、本部で会議や研修に出席したりする時間がきちんと管理されていない、といった具合です。

それだけに、タイムカードなどによって管理されていない労働時間がある場合には、自身で、日々、その時間帯、業務の場所・内容をメモしておくことが必要です。

ただ、そういったメモがない場合でも、自身が普段業務に使用しているパソコンのログ、サーバーへのログイン・ログアウトの記録、校舎のセキュリティの記録、授業のシフト表、会議や研修のスケジュールを記載した文書やメール、校舎間の移動に使用した鉄道のICカードの利用記録等から労働時間を推定することができる可能性もあるので、あきらめずに弁護士に相談してみるとよいでしょう。

「名ばかり管理職」の扱い

各校舎の責任者などについて、管理監督者にあたるとして残業代を支給しないケースも目立ちます。しかし、塾の各校舎の責任者が、残業代を支払わなくてもよい「管理監督者」にあたることは稀でしょう(詳しくは名ばかり管理職の問題のページをご覧ください)。

非常勤講師の場合

非常勤の講師についても、残業代が支給されていないことが非常に多いと思われます。
塾の非常勤講師の雇用契約においては、通常、給与が時給か授業のコマ単価で定められ、授業を行った時間数に対応して給与が支払われています。
しかし、塾の講師の仕事には、授業以外に授業に付随する業務が付きものです。たとえば、塾の講師は、授業時間は1コマ60分でも、生徒から提出されたノートのチェックや生徒からの質問に対応しなければならないことが普通にあり、そのような場合には、勤務時間が授業時間を大幅にオーバーしてしまうことも稀ではありません。こうした時間が労働時間としてカウントされておらず、残業代の不払いが発生してしまうのです。

おわりに

かく言う私も、司法試験を受験していた時代に、塾の非常勤講師をしていたことがありますが、生徒の質問に答えたり、授業に付随して教材を作成したり、生徒から提出された宿題のノートをチェックさせられたりして、授業時間を大幅に超える時間の業務に従事していたにもかかわらず、全く残業代の支払いを受けていませんでした。

生徒を教えることが楽しかったことや、その仕事をずっと続けるつもりではなかったこともあって、ルーズになってしまっていましたが、今考えると、そういった労働者の姿勢も残業代の不払いを生み出す一つの要因になっているのではないかと思います。