退職金の未払い(その他労働問題)

  • もらえると思っていた退職金が、全く支払われない。
  • 退職金が予想よりも低額だった。

このような退職金の問題は、長年働き続けてきた労働者からすれば、「到底納得できない」と感じられるかもしれません。

ただ、退職金というのは、皆さんが思っているほど「当然受け取れるもの」ではないことに注意する必要があります。
退職金は、労働基準法や労働契約法によって支払いが義務づけられているわけではなく、会社が労働者の功労をねぎらうため、恩恵的に支給するに過ぎないことが多いのです。

この場合、退職金を支給するか否か、またどれだけの金額を支給するかは、会社の裁量であって、労働者が何かを根拠に当然に請求することはできません。

ただ、一定の要件を満たせば、法律的に退職金を請求できることもあります。

「退職金」が法律的に請求できるとき

次のいずれかの場合には、労働者は、法律的な根拠をもって退職金を請求することができます。

①労働契約や就業規則によって退職金の支給基準が明確に定められている場合

労働契約や就業規則で「5年勤務で○万円、10年勤務で△万円、20年勤務で□万円…」などのように、退職金の支給基準が明確に定められていれば、労働者は、その定めを根拠に、基準に応じた退職金を請求することができます。

先ほど触れたとおり、退職金は、もともとは「法律上支払わなければいけないもの」ではありませんが、こうした契約・規則があれば、民法や労働契約法に定める契約上の義務として、支払い義務が発生することになります。

②慣行によって支給基準が明確になっている場合

労働契約、就業規則に定めはないものの、長年にわたり、①と同様「5年勤務した労働者には○万円が支給され、10年勤務した労働者には△万円、20年勤務した労働者には□万円…」といったように、一定の基準にのっとって退職金が支給されていることが明確であれば、その慣行にのっとり、退職金を請求できる可能性があります。

これは、一定の条件を満たせば、慣行が事実上、就業規則と同じように労働条件に関するルールとして認められるためです(これを「労使慣行」といいます)。

ただし、あくまで基準の明確性が必要ですから、「今まで退職していった従業員が、大なり小なりもらっているから、たぶん自分ももらえるだろう」というぼんやりした期待では不十分です。

自身のケースが「労使慣行」と言えるかどうかは、全体的な事情から判断しなければいけないので、一度弁護士に相談してみてください。

退職金の規程は早めに確認

退職金の不支給に関する相談で多いのは、そもそも、退職金請求権があるのかないのかはっきりしない事案です。
就職の際に、退職金があると聞かされていたのに、いざ退職するときになってみると、退職金がいくらもらえるのかはっきりせず、会社も退職金を支払おうとしないといった事案です。

このような事案では、たいていは、労働契約や就業規則に退職金の支給に関する規定はなく、また、退職金が支払われている場合でも、明確な支給基準がないことが多いように思われます。

このような事態を防ぐためには、早めに退職金に関する規定の有無を確認することが大切です。

退職金の口約束はあるものの、その具体的支給基準ははっきりしない、というような場合には、あらかじめ、会社との間で、退職金共済に入ってもらい、共済から支払われる退職金の全額を受け取ることができるよう書面で約束するとか、退職金の支給基準(たとえば、退職時の基本給額×勤続年数)を規定した退職金規程を作ってもらうよう、話し合いをしておく必要があります。
会社が要求に応じない場合には、労働局などにあっせんを申し込むなどの方法を講じる必要もあるでしょう。

就業規則に基づいた退職金の不支給、減額の問題

退職金の不支給についてもう一つ問題になることが多いのが、懲戒解雇の場合の退職金の不支給や、自己都合退職の場合の退職金の減額が就業規則で定められていることを理由に、退職金が支給されなかったり、減額されたりする事案です。
このような事案では、懲戒解雇の有効性や、懲戒解雇が有効であるとしても退職金全額を不支給とすることの可否、退職が自己都合によるものか会社都合によるものかといった点が問題になりますが、それらは、解雇・退職をめぐる経緯を総合して判断することになりますので、いちど弁護士に相談してみてください。

納得できない場合には

「法律的に請求することができないケース」に該当するものの、どうしても納得できないという場合には、少し本筋から離れて、他に何か請求できるものが無いか考えてみる手もあります。

最も可能性が高いのは、未払い残業代です。
残業代請求の時効は2年ですが、会社が様々な方法で残業代の支払いをごまかしていた場合、実は、まとまった額の未払い残業代の請求権が発生しているかもしれません。
元々の趣旨からは逸れますが、これを退職金代わりに請求するということも考えられるのです。