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労災の損害賠償請求の特殊性

労災の損害賠償請求には、労働問題としての特殊性があります。

損害賠償請求が認められるかどうかは、会社(雇用主)に安全配慮義務違反があったかどうか、また、それが事故に影響しているか(因果関係があるか)ということが前提となります。

つまり、仕事中に起きた事故などについて、会社は常に損害を賠償する義務を負うわけではなく、会社に何らかの責任(安全配慮義務違反または不法行為)があるときのみ、労働者の損害賠償請求は認められるのです。

労災発生の経緯の重要性

会社に安全配慮義務違反があったかどうか、またそれが労災の発生や労働者が受けた被害にどれだけ影響しているかを判断するためには、どのような経過をたどって労災が発生したのかが重要となります。

そのため、ご相談時には、労災が発生するまでの経緯を詳しくお聞きすることになります。
具体的には、事案に応じて、業務内容、作業環境、労働者自身の特性、会社から労働者への指示の内容等、労災が発生した当日の状況だけでなく、普段からの労働の実態も確認します。

機械操作中の事故のように、機械や部品の構造が問題となる場合、相談者の方にとっては説明しづらいと感じる部分もあるでしょうが、場合に応じてイラストや模型を使用するなど、弁護士と相談者お互いがきちんと理解できるよう工夫をしています。

詳細が不明な場合にも、一度相談を

事案によっては、突発的な出来事のため労働者本人が経緯をあまり理解できていないケースや、労働者本人がお亡くなりになっているため詳細が不明というケースもありますが、このようなときでも、客観的に安全配慮義務違反があると考えられれば損害賠償請求をすることができますから、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

損害賠償請求における立証の必要性

損害賠償請求は、任意交渉のみで解決できることもありますが、もし訴訟になれば、労働者の側から、会社の安全配慮義務違反によって労災が発生したことを証明しなければいけません。

この点、一般的な交通事故であれば、警察が作成した詳しい資料が存在するため、それに基づいてある程度立証することができるのですが、 労災事故の場合には、第三者が作成した資料は乏しいことがほとんどです(労働基準監督署が資料を作成することもありますが、大まかな内容にとどまることが多いです)。

そのため、労働者側の弁護士が、労災発生の経緯について確認をしたうえで、労働安全衛生法や同法に基づく諸規則等に着目しながら、積極的な主張立証をおこなうことが大切です。

労働者にも不注意やミスがあった場合

会社にも責任があるものの、労働者本人が機械の操作を誤ったり不注意だったりしたことが労災事故の一因となっている場合、公平性の見地から、労働者本人の過失の程度に応じて損害賠償の額が減額されることがあります。これを「過失相殺」といいます。

交通事故であれば、事故の形態に応じて過失相殺の割合の目安が設けられているのですが、労災事故の場合には、このような目安はありません。 そのため、交渉や民事訴訟・労働審判において、会社側から労働者の過失を不当に大きく主張される傾向にあります。ですから、それに対して、会社の責任が大きいことを示す具体的な事情をどれだけ主張できるかが重要となります。