労働組合の活動

労働組合は、主として、労働条件の維持・改善といった経済的地位の向上を目指す労働者の団体ですが、どのようにしてそれらを実現していくのでしょうか。

労働組合の力の源泉は、何と言っても労働者の団結にあります。
弁護士は、法律の規定を根拠に会社と交渉し、会社が要求を受け入れなければ紛争を裁判所に持ち込んで、公平中立な第三者である裁判官の法律的判断に委ねます。つまり、あくまで法律の力による紛争の解決を目指します。

これに対し、労働組合は、もちろん法律的根拠に基づく要求もしますが、それだけではなく、たとえば、給与の引き上げや福利厚生の向上など、必ずしも法律上会社が義務づけられているわけではない要求もします。そして、それが受け入れられなければ、場合によっては就労を拒否すること(ストライキ)によって会社に譲歩を迫ります。それが可能なのは、労働者が一致団結して会社に抵抗すれば、会社は事業運営が思うに任せなくなるからです。

労働組合がその要求を会社に認めさせるための手段にはいろいろなものがありますが、ここでは、主なものをご紹介しておきます。

団体交渉

労働組合が、その代表者を通じて、会社と、労働条件等の問題をめぐって交渉することを団体交渉といいます。団体交渉をおこなうことは、憲法で認められた労働者の権利です(日本国憲法第28条)。

労働組合が団体交渉を希望する場合には、何について交渉したいかをまとめて、会社に対して団体交渉を申し入れます。団体交渉の対象となる事項に制限はなく、賃金、労働時間などの労働条件、労働組合の活動に関わる事項の他、会社の経営や役員人事に関わる事項も対象とすることが可能です。

労働組合側で団体交渉に出席するのは、法律上、労働組合の代表者と労働組合の委任を受けた者であると定められています。通常は、労働組合の役員が出席することが多いでしょう。
他方、会社側では、団体交渉の対象となる事項について決定権を有する者が団体交渉に出席するべきであると考えられています。一般には、会社の代表者や役員、工場や支店の責任者などが出席することが多いでしょう。

団体交渉の日時、場所、回数については、法律上決まりはないので、労働組合と会社との協議によって決めます。
団体交渉は、通常は、会社の会議室などでおこなわれることが多く、時間は2、3時間程度が一般的です。回数については、あらかじめ決められる性質のものではなく、何度か交渉を重ねたうえで、交渉の結果、妥結に至ればそれで終了となるし、交渉が行き詰まれば、それで打ち切りとなることもやむを得ません。

会社は、一定の事項については、団体交渉を拒否することは許されず、団体交渉を拒否したり、労働者側の要求に真摯にこたえようとしない場合は、「団交拒否」とか「不誠実団交」として、制裁の対象となります。

争議行為(ストライキなど)

団体交渉を行っても、会社が労働組合の要求を受け入れようとしない場合、労働組合は、労働者の要求の実現を目指して集団行動に出ることができます。これを争議行為といいます。争議行為をおこなうことは、憲法で認められた労働者の権利です(日本国憲法第28条)。

争議行為には、一定数の労働者が一斉に就労をやめるストライキの他、業務に従事しながら能率を低下させるサボタージュ(「サボる」という言葉の語源です)、職場占拠など、さまざまな方法があります。
こうした争議行為がおこなわれている間、会社の生産活動はストップしてしまうか、大幅に生産効率が低下してしまうため、争議行為は、会社に労働組合の要求を受け入れさせる圧力となるわけです。

ストライキなどの争議行為をおこなう場合、一般に、労働組合は会社に予告をしたうえで、争議行為を開始します。ただし、予告なしでおこなわれた争議行為がすべて違法なわけではないと考えられています。

争議行為は、やり方次第では、形式的には刑事上、民事上の責任を生じる可能性があります。たとえば、職場占拠をおこなえば、刑法の建造物侵入罪に該当する可能性がありますし、ストライキをおこなうことは、雇用契約で定められている労務提供の義務を果たさず、会社に損害を与える可能性があります。しかし、適法におこなわれた争議行為については、労働組合や労働者は、そうした責任を問われないことになっています。

他方、争議行為をおこなっている間の給与がカットされることはやむを得ません。

日本では、ストライキがおこなわれることは少なくなりましたが、ヨーロッパでは、ストライキは当たり前のようにおこなわれていて、旅行者が旅行中に足止めを食ったという話をよく耳にします。

日本でも、以前は、毎年春になると、労働条件について労働組合と会社との間でおこなわれる春闘の交渉の決裂を受けて、鉄道やバスなどでストライキをおこなわれていましたし、私が法律相談を受けることの多い労働組合は、今でも時折ストライキをおこなっています。
ストライキなどの争議行為をおこなうことは、何か大げさなことのように思えますが、労働者にとって当然の権利なのです。

労働協約の締結

団体交渉や争議行為の結果、労働組合が会社にその要求を認めさせることができた場合には、その内容を、労働組合と会社との合意である「労働協約」にまとめることがあります。
労働協約は、正式に書面化されるのが一般的ですが、覚書や口頭での合意にとどめられる場合もあります。

労働協約で、労働条件など労働者の待遇に関する基準が定められた場合には、会社は、個々の労働者との関係でそれを守らなければなりません。ただし、労働協約が適用されるのは、その労働協約を締結した労働組合の組合員に限られます。

おわりに

以上のように、労働組合がその要求を会社に認めさせるための手段にはいろいろなものがありますが、それらを有効に活用するためには、法律の定めに従って実行することが必要です。
団体交渉や争議行為について後から責任を追及されたり、会社に労働協約を守らない口実を与えたりすることがないように、また、会社が不当労働行為をおこなった場合には会社の責任を追及することができるよう、適宜弁護士に相談をしながら活動を進めるとよいでしょう。