過労自殺の損害賠償請求

過労自殺/損害賠償請求

雇用主(会社)に対する損害賠償請求の内容

長時間労働をさせたり達成困難なノルマを課したりするなど労働者の健康への配慮を怠ったことが労働者の死亡につながったとして、労働者の遺族は、雇用主に対し、安全配慮義務違反ないし不法行為に基づく損害賠償を請求することができます。

損害賠償の内容は、逸失利益(労働者が将来得られたであろう収入を償うもの)、慰謝料(死亡による精神的苦痛を償うもの)、葬儀費用などです。

雇用主への損害賠償請求には、時効があります

不法行為に基づく損害賠償請求には、労働者が死亡したときから3年、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求には、労働者が死亡したときから10年の時効があります。

雇用主への損害賠償請求の手続き

雇用主への損害賠償請求の手続きとしては、任意交渉と訴訟が考えられます。
過労死の損害賠償額は高額になるため、雇用主がなかなか支払いに応じようとしないことも多いですが、訴訟を負担に感じられるご遺族の方には、まず任意交渉を行ってみてもよいかもしれません。

雇用主が支払いに応じようとしない場合には、訴訟を提起するしかありません。訴訟は、通常、地裁で行う一審に1~2年かかります。一審で敗訴した雇用主が、なかなか判決を受け入れようとせず、控訴審(高裁)、上告審(最高裁)へ進むこともありますが、時間がたてばたつほど、雇用主が支払わなければならない遅延損害金の額が膨大な額になっていきます。

過労自殺/損害賠償請求

相続放棄には注意が必要です

労働者が亡くなった後に、たとえば労働者に借金があったというような事情から、ご遺族の方が相続放棄の手続きをとることがあります。
しかし、いったん相続放棄の手続きをとってしまうと、過労自殺を理由に雇用主に損害賠償請求をすることができなくなります。なぜなら、雇用主への損害賠償請求は、過労死した労働者の雇用主に対する損害賠償請求権を相続したご遺族の方が行うものだからです。

ですから、過労自殺が疑われる場合には、相続放棄をするべきかどうか、慎重な検討が必要です。相続放棄の期間は死亡から3か月とされていますが、その期間の延長を申し立てることもできますし、他に限定承認という方法もありますので、ご遺族の方は、相続放棄をする前に弁護士に相談されることをお勧めします。

過労うつについて

近年目立つのが、自殺には至っていないけれども、職場でのトラブルや長時間労働などの精神的負担のために、精神疾患を発症してしまうケースです。 このようなケースでも労災を申請することができ、労災と認定されたときには、次のような給付を受けることができます。

  • 療養補償:労災による怪我や病気の治療費を補償する。
  • 休業補償:休職期間中の収入の80%(特別支給金を含む)を補償する。

申請の時効は、それぞれ療養日、休業日から2年です。
労災申請の方法、労災認定基準、労災と認定されなかった場合の不服申立の方法は、過労自殺の場合と同じです。

雇用主に対して損害賠償請求ができることも過労自殺の場合と同じですが、請求できる損害賠償の内容は、治療費、休業損害、慰謝料などです。不法行為に基づく請求の時効は治癒日から3年、安全配慮義務違反に基づく請求の時効は治癒日から10年です(ただし、時効の起算点には争いがあります)。

後遺障害が残った場合

うつ病が長引き、もはや症状の改善が見込めない場合には、症状が固定したとして後遺障害が認められる場合があります。
その場合、労災と認定されていれば、障害補償(年金または一時金)の支給を受けることができます。申請の時効は症状固定日から5年です。

また、雇用主に対して、逸失利益や後遺障害についての慰謝料を請求することもできます。不法行為に基づく請求の時効は症状固定日から3年、安全配慮義務違反に基づく請求の時効は症状固定日から10年です。