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過労自殺の労災申請

過労自殺の労災申請

過労自殺/労災

過労自殺が疑われる場合、労働基準監督署に労災申請(公務員の場合には公務員災害補償基金に対する公務災害申請)をすることになります。申請できるのは、亡くなられた労働者の特定の遺族で、遺族を代理して弁護士や社会保険労務士が申請することもできます。

通常の労災では、雇用主が労災申請の手続きをとってくれることがほとんどだと思いますが、過労自殺の場合には、雇用主が労災申請を拒否する場合が少なくありません。

労災で認定を受けるには、認定基準を満たす必要があります

労災の制度において、過労自殺と認定するか否かの基準は(平成23年12月26日基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(外部ページに移動します)で定められています。

これによると、特定の精神障害を発症していたことと、原則として発症直前の6か月間に

  • 長時間労働があった
  • 仕事が原因で重度の病気や怪我をした
  • 重大な仕事上の失敗をした
  • ノルマを達成できなかった
  • 退職を強要された
  • パワーハラスメントを受けた

といった何らかの重い心理的負荷をともなう出来事があったことが認定の基準としてあげられています。

労災の認定を受けるには、意見書の提出が重要です

労災の申請を受けた労働基準監督署は、労働者の仕事の状況、職場での人間関係、労働時間、病歴等を調査のうえで、自殺が業務上か業務外か(労災にあたるかどうか)の判断を行います。

ただし、労災申請が行われた後も、労働基準監督署の調査に対し、雇用主が自身に不都合な事実や資料を隠したり、他の従業員に労働基準監督署の事情聴取に対して嘘の回答をするよう働きかけたりする恐れがあります。

また、労働基準監督署の調査官も、タイムカード、出勤簿、業務日報、病院の通院記録といった基礎的な証拠はともかく、パソコンのログ、セキュリティの記録、メールの記録、会議の議事録、人事考課表などの証拠については、必ずしも収集してくれるとは限りません。雇用主側の関係者ばかり事情聴取をして、それ以外の証人の発掘に積極的でない場合も少なくありません。

そこで、過労自殺のケースでは、労災申請の手続きに弁護士が積極的に関与し、証拠を収集したうえで、精神障害の発症の有無や発症の時期、心理的負荷をともなう出来事の内容や程度について、労働基準監督署に適正な調査・検討を促すために弁護士の意見書を提出することが望ましいでしょう。

労災と認定されたときに受けられる給付

労災と認定されると、遺族には、

  • 亡くなった労働者の遺族の生活を補償する遺族補償(一時金または年金)
  • 亡くなった労働者の葬儀費用を補償する葬祭料
  • 亡くなった労働者の未成年の子の学費を支援する就学援護費

などが支給されます。

労災と認定されなかった、または認定の内容に不服がある場合には

労災と認定されなかったり、認定の内容に不満があったりする場合には、不服を申し立てることができます。

決定の通知を受けた日から3か月以内に都道府県の労災保険審査官に審査請求をすることができ、さらに、審査請求が認められなかった場合には、2か月以内に東京の労働保険審査会に再審査請求をすることができます。それでも申請が認められない場合には、審査請求または再審査請求の決定から6か月以内に、労災不認定処分の取消しを求める行政訴訟を提起することができます。 労災の手続の流れ

なお、労災(過労自殺)と認定された場合の給付の金額は、死亡直前の平均賃金をもとに計算されていますが、サービス残業があったことを考慮せずに計算をするなどの事情から、適正な金額を大幅に下回る金額しか支給されていないことがあります。そのような場合にも、審査請求を行うことをお勧めします。(詳しくは給付基礎日額の問題を参照)

労災の申請には、時効があります

労災の申請には時効がありますから注意が必要です。
労災の遺族補償には死亡から5年、葬祭料には死亡から2年の時効があります。