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過労自殺の労災認定と精神障害の関係

過労自殺として労災の認定を受けるには、労働者が「心理的負荷による精神障害の認定基準」に定められた精神障害を発症していたことが求められます。具体的には、

  • うつ病
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • 適応障害
  • 統合失調症

などが挙げられます。

精神障害の発症が要件とされている理由

なぜ労災の認定を受けるのに精神障害の発症が求められるのか、不思議に思われる方も多いと思います。
そもそも労災の制度は、労働者が仕事が原因で心身を害してしまった場合に、それによる損害を補償するものです。したがって、仕事が原因で精神障害を発症し、その結果として物事を適切に判断できなくなり、自殺に追い込まれてしまったと認められてはじめて、労災と認定されるわけです。逆に言えば、物事を適切に判断できる状態で、自分の自由な意思で自殺をした場合には、労災とは認定されません。

精神障害の発症の時期

過労自殺のケースでは、労災と認定されるためには、労働者が特定の精神障害を発症していたことが必要ですが、さらに、発症の時期がいつ頃かも重要です。なぜなら、労災の認定の際に評価の対象となるのが、原則として発症直前の6か月間の出来事だからです。

精神障害の発症時期が特定できたら、発症直前の6か月間に、何か重い心理的負荷をともなう出来事がなかったかを重点的に探すことになります。逆に、精神障害の発症に繋がったのではないかと思われる重い心理的負荷をともなう出来事があったのであれば、その出来事から6か月以内に精神障害を発症していた可能性を探ることになります。

こうした検討をしないまま労災の申請手続きを進めてしまうと、労災の認定の際に評価の対象となる出来事をきちんと主張できていなかったり、労災の認定にとって不都合な時期に精神障害を発症していたことをうかがわせる事情を主張してしまったりといったことになりかねません。

医師の診断がない場合でも、さまざまな事情から発症の有無と時期を判断します

自殺をした労働者が、生前に精神科に通院し、精神障害の診断を受けていた場合には、精神障害を発症していたことやその時期は明らかです。けれども、自殺をした労働者が、生前に精神科に通院し、精神障害の診断を受けているとは限りません。精神障害を発症し自殺に追い込まれるほど過重な労働をしたり、精神的に追い詰められたりしている中で、継続的に通院することは容易ではないからです。

そこで、精神障害の診断がない場合には、労働者の日記やメールなどのさまざまな資料、労働者と関わりのあった人物からの聴取によって、精神障害を発症していたかどうか、発症の時期はいつかを判断することになります。その結果、精神障害の発症が認められ、労災と認定されることも少なくはありません。
ただ、その場合も、時間が経過するにつれてメールなどの資料や人の記憶は急速に失われていきますから、そうした証拠を早期に収集することが重要です。